値上げの春 中小にも波及へ
来週から2018年度がスタートする。年度スタートとともに、荷主企業は物流コスト上昇を反映して「製品値上げ」をする。荷主業界の各社は、原料価格の上昇に加えて、物流費の高騰を要因とする価格改定に踏み切った。
荷主業界を取り巻く物流環境は、ドライバー不足を背景とした物流費の上昇により厳しさが増しており、「自社での吸収に限界」が来ている。人手不足や軽油価格高騰などを背景に、先行する大手物流企業の値上げ交渉が一定の影響を及ぼしたといえる。
今後も、労働力不足のさらなる深刻化、働き方改革に伴うコストアップなどにより、物流コストの上昇トレンドは続くことが予想されている。荷主企業にとっても、ビジネスに不可欠な「モノを届ける」ためには、物流会社に一定の「対価」を支払うことは避けられず、負担の一部を購買者に転嫁する動きはさらに加速するだろう。
消費者やエンドユーザーへの価格転嫁がさらに進めば、まだ「果実」を得ていない中小物流企業でも、適正運賃・料金の収受へ進むことは十分に期待できる。
都内の協同組合調査によると、中小トラック運送企業の8割は「希望する運賃」を収受できない状況が続いている。つまり、8割の事業者が運賃値上げを希望しているのだ。
ただ、荷主との運賃交渉の有無(昨年8月から今年1月まで)を聞くと、「交渉した」は42・1%(前回38・9%)で、「今後交渉する」の15・2%を合わせて57・3%と6割近くになるが、4割強の事業者が「交渉したいが、できない」状況が続いていることがわかった。
また、前回調査からの半年間で、「荷主から何らかの要請を受けた」との回答は前回より少なったものの、全体の2割の事業者が値引き要請など何らかの要請(強要)を受けていると答えており、憂慮すべき状況にある。
昨年11月から標準貨物運送約款が改正され、「運賃」と「料金」を別建てで収受できるようになったが、中小運送会社からは、制度改正をテコにした料金交渉に一部であきらめムードも漂っていた。
だが、ここへきて物流業界の人手不足への社会的認知や一連の値上げなどによって環境が徐々に変わってきた。
BtoBの物流分野でも、荷主企業の製品価格改定がさらに進めば、中小物流会社にも価格交渉の余地が出て来よう。思い切った行動に期待したい。