全体最適化の動きを加速
チルド食品メーカー9社が持続可能なチルド食品物流の実現へ「チルド物流研究会」を発足した。小売り、卸など関係団体と協議し、各社の納品条件交渉に反映させる。食品業界は加工食品分野で製・配・販による物流改善が先行しており、サプライチェーン全体最適化への動きが加速する。
9社のうち、ハム・ソーセージ業界の4社は昨年12月に「SDGsへの貢献と持続可能な物流のための食肉加工業界取組宣言」を行い、配送ドライバーの負担軽減、納品条件の見直しによる効率化、共同配送の推進に取り組んでいる。今般、乳製品、調理食品の大手が加わり、物流改善へ踏み込む。
2024年問題への対応が迫られる中、チルド食品の物流は短い納品リードタイム、多頻度少ロット配送、冷蔵保管の必要性など特有の課題がある。危機感を持った9社が業界の垣根を越え結束した。
7日の記者会見では9社の担当者が出席し、関連メーカー企業、流通企業、物流事業者が一丸となり協議を進める方向を示した。課題解決と環境負荷低減を両立させ、消費者に安定的に商品を供給する。そのためにも発・着荷主企業がこれまで当たり前に行ってきた納品条件や商習慣を見直し、ドライバーが働きやすい環境を整えることが前提であるとの認識だ。
取り組み課題の1つである納品条件の緩和は、ドライバーの負担軽減や共同配送など物流改善を大きく推し進める。
説明によると、小売業のセンター納品は午前から昼過ぎの受注後、数時間後には拠点を出発、その日のうちに各センターに納品し、翌日店舗に届く。注文から納品まで4時間しかない小売業もあるのが実態という。短いリードタイムでは安定供給も徐々に困難となる。リードタイムの延長で配送車両手配の時間に余裕ができ、計画的な在庫管理で欠品リスクを低減する。共同配送の可能性も広がる。
研究会には行政もオブザーバーとして参加し、連携を深める。農水省の藏谷恵大食品流通課長はチルドの特性として「物流上はフレッシュとフローズンの両方の難しさを併せ持つ一方、メーカーは高付加価値化と差別化のチャンスは大きい」ことを挙げる。
物流では協調して運送の負担を減らし、商品面では競争を通じ高付加価値化を促進する。荷主の高付加価値化は運送事業者への支払い原資の確保につながるものであり、取り組みの拡がりが期待される。