共同歩調で脱炭素化を加速
今年度補正予算案が閣議決定され、国土交通省は政府が経済対策で示した〝新しい資本主義の起動〟に関連して、電動車の集中的導入や物流デジタルトランスフォーメーション(DX)推進支援などを盛り込んだ。電動車の導入補助は当初予算で提示しているが、2050年カーボンニュートラルの実現へ各業界で電動化の動きが加速化しており、補正予算にも計上された。
運輸産業は日本のCО2排出量の2割を占め、脱炭素化へ果たすべき役割は大きい。コロナ禍からの経済再生の観点からも脱炭素化への期待は高まる。温暖化対策が経済成長の制約とならず、社会経済の変革をもたらし、成長戦略につなげる好循環の原動力になる。
商用車の電動化にも高い目標が掲げられ、ここにきてメーカーや物流事業者の新たなEV開発、導入の発表が相次ぐ。環境対策とともに、充電インフラを活用した災害対策など地域社会貢献にもつながる。車両、設備のハード面だけでなく、カーボンニュートラルの実現へ、事業者間、異業種、自治体との連携も活発になってきた。
日本物流団体連合会(物流連)は物流分野の低炭素・脱炭素化に向けた情報交換会を先月立ち上げた。年度内に3回会合を予定しており、各社の環境対策や課題を共有する。物流業界のみならず、他の産業界や海外からも幅広く先進事例など情報収集・発信していく考えだ。
異業種交流は新たな価値創出の商機にもなる。業界の垣根を超え、足並み揃えカーボンニュートラル実現に挑戦する姿勢が大事だ。
物流連の池田潤一郎会長は先ごろの記者会見で海運業界の脱炭素化の動きにふれ「日本が世界を引っ張り、荷主とともに受け身でなく率先していくこと」と強調する。次なる成長をけん引するには、グローバルに日本がその存在感を示す必要があるとの認識だ。
そのためにも電動化推進をはじめ個々の取り組みとともに「物流の標準化、効率化の動きを加速化させることが必要」と物流連が進める標準化の意義にも言及する。輸送効率化が進まなければカーボンニュートラルのハードルはさらに高いものになる。
物流DXも標準化がその前提となる。これからの成長を支える脱炭素化、DX推進も荷主やサプライチェーンとどこまで共同歩調をとれるか。今般の経済対策がこれらに前向きに臨めるよう実効性あるものでなければならない。