円滑な事業承継へ支援策を

中小企業の景況感が悪化しているとの声が聞かれる。1月は昨年の記録的な大寒波と雪害から一転し、暖冬で季節商品が低迷した。また、米中貿易摩擦の影響による受注減少も景況感を押し下げた。

全国中小企業団体連合会(全国中央会)がまとめた1月の景況調査によると、運輸業は慢性的な人手不足に加え、小売・卸売などの荷動きが低調だったことが大きく影響し、売上高・景況・収益状況の主要3指標すべてが前月より悪化した。

運輸業の景況は昨年11、12月と改善を示していたが、1月の景況DIは前月比6・9ポイント低下のマイナス21・4と、マイナス20台に水準を落とした。売上高DIは18・8ポイント減のマイナス19・1、収益状況DIも6・1ポイント減のマイナス19・1と悪化した。

他の指標では、販売価格(運賃・料金)DIは前月(プラス14・5)から8・3ポイント低下しプラス6・2となったが、11月水準並みでプラスを維持している。雇用人員DIが前月比3ポイント減のマイナス26・0と悪化しており、人手不足が慢性化し経営を圧迫している。

人手不足の深刻な状況について、「受注抑制や事業規模の縮小が行われているほか、小規模・零細企業の休廃業・解散が増加している様子がうかがえる」(全国中央会・政策推進部)との指摘もある。

東京商工リサーチ(TSR)の調査によると、2018年の道路貨物(トラック)運送業で休廃業・解散した企業数は、前年比7・5%増の430件だ。2013年以降では最も多い。トラック運送業の2018年倒産(負債額1千万円以上)件数が182件と3年連続200件割れしていることと比べ、2年連続の増加傾向である。

トラック運送業の倒産件数は減少しているが、「休廃業・解散」件数をあわせると、18年は612件と3年ぶりの600件超えとなった。

トラック運送業の小・零細企業は、業績改善の遅れ、後継者難から事業継続が困難な企業が多い。市場から撤退する形態は、M&Aや事業譲渡のほかには「倒産」と「休廃業・解散」が中心である。

改正貨物自動車運送事業法が成立し、今後は法改正効果も期待される。しかし、小・零細企業は生産性向上や人手不足など、立ちはだかる課題に向かうには後継者や資金面での高いハードルへの支援が急務になっている。

経営者の高齢化や人手不足の深刻化が増すなか、円滑な事業承継や事業譲渡に向け、多面的で具体的な成長支援策が求められている。