切れ目のない支援措置を

政府は現行の燃料油価格激変緩和対策事業を組み直し、5月22日から軽油で1㍑当たり10円引き下げる定額の価格引き下げ措置を発表した。
米国の関税措置に対する与党の提言を受けたもので、石破茂総理は「米国との協議を前進させるとともに、国内対策も影響を受ける企業への資金繰り支援をはじめ、企業や国民生活への影響をよく注視しつつ、必要な支援に万全を期す」と述べている。
併せて、足元の物価高に対応し、電力使用量が増加する7~9月に電気・ガス料金支援を実施する。具体的には今後の燃料価格や電気料金の動向などを見極めた上で、5月中に決める方向だ。
資源エネルギー庁が発表した21日時点での軽油の店頭価格は、1㍑あたり全国平均164・8円。前週より1・4円下げたが、3月末の164・6円を上回る水準。昨年の同時期とは16・6円も値上がりしており、トラック運送事業者の収益を圧迫し続ける。
帝国データバンク(TDB)が行った、2025年度の業績見通しに関する企業の意識調査で、「増収増益」と回答したのは24・6%と前年度(26・3%)より減少し、4社に1社にとどまる。下振れ材料(複数回答)は、「人手不足の深刻化」が39・0%でトップ。次いで「物価の上昇(インフレ)」35・1%で、「原油・素材価格の動向」は3番手の33・5%である。
これに対し、運輸・倉庫業の「増収増益」予想は22・6%と前年度(29・3%)から6・7ポイント減少する。下振れ材料は、「原油・素材価格の動向」57・7%、「人手不足の深刻化」55・8%と、5割超の事業者が回答する。他業種と比較して、燃料高と人手不足が業績面でも大きく打撃を受けている。
TDBでは今後、デジタル化を追い風に成長が期待される業種がある一方で、世界経済の減速や資源価格の変動、人手不足など、外部環境の逆風が受けやすい業種も多いとみている。
社会的インフラである物流も逆風を受ける。24年問題に対応しながらも自助努力では限界がある。
今回の定額の価格引き下げ措置は、協議中の「暫定税率」の扱いが決まるまでの措置だが、明確な結論が得られ、経営におけるコスト面での不確定要素を軽減したい。
米国関税措置など先行き不透明な要素も重なる中で、とりわけ中小、小規模が多数のトラックは切れ目のない支援措置が求められる。