前向きに働き方改革を
国土交通省の一見勝之自動車局長は就任にあたっての会見で、トラック運送業界の働き方改革について「長年の労働慣行を荷主との関係も含めて見直していく」との見解を示した。
働き方改革を進めるうえで長時間労働の是正が急がれる。
一見局長は昨年の年間労働時間が全産業平均2136時間に対し、大型貨物2604時間、バス2520時間、タクシー2328時間と自動車産業の長時間労働が依然として課題であることを指摘。さらに脳疾患、心臓疾患の労災認定が全産業253件のうち85件が自動車であることから、自動車産業としての働き方改革をしっかり行うことを強調する。
2024年4月からの時間外労働上限規制960時間を「いかに段階的に下げていくか」とし、これについてはトラック、バス、タクシー各業界で特色があり、それぞれ事情も異なることを踏まえ、的確に対応する構えだ。
こうした観点からもトラック運送業界は荷主との関係が不可欠である。
今般の改正事業法や、荷主などの協力・理解を得る「ホワイト物流」推進運動など、労働環境改善に向けた動きがより実効性あるものとするにも荷主の意識変化が求められる。
一見局長は08、09年に貨物課長を務めており、10年前当時とはトラック運送業界と荷主との力関係も変わったとの認識を示す。昨年12月の改正事業法成立もまさしく今の業界の力量を表わしているものととらえる。
一方で「トラック運送業界の努力が大きいが、人手不足で荷物が受け入れない事態となり、荷主側も変わらざるを得ないとの認識もあるのではないか」とみる。人手不足問題もこの10年の大きな変化とし、それだけに長時間労働の是正にはさらなる荷主の理解が必要と指摘する。
改正事業法では荷主対策関連が7月1日に施行された。トラック事業者の努力だけでは働き方改革・法令遵守を進めるのは困難であり、荷主勧告制度の強化や、国交相による荷主への働きかけなど規定を新設した。一見局長は「厳しい制度を使う前に、荷主との関係で問題があれば行政サイドで話をするもの」とその有用性を示唆する。
前任(海上保安庁次長)ではワーク・ライフ・バランスに取り組んだ。「ライフ・ワーク・バランスと言葉を変えた。仕事があって生活があるのでなく、生活があった上で仕事がある」。そうした明るく、より前向きに働き方改革をとらえる姿勢が大事だ。