単なる大会で終らせるな
労働災害根絶へ積極的に取り組む――。7日、滋賀県で初開催された、全国陸上貨物運送事業労働災害防止大会の大会宣言が満場一致で採択された。800人以上参加しての誓いが、大幅減少実現への弾みとしたい。
前年度からスタートした「労働災害防止5か年計画」は2年目になる。同計画では、最終年度の22年度までに死亡者数を、前計画5年間中に発生した総死亡者数の15%以上減少(510人以下)させることなど目指す。年平均102人以下に抑えることで達成する内容だ。昨年度は102人と辛くもだ。
では今年度はどうなのか。9月末現在、前年同期比5・3%増の60人と増加に転じた。さらに懸念されるのが、死亡災害を含む休業4日以上の死傷災害者数が急増していることだ。前年対比こそ減少傾向だが、すでに1万人(速報値)を超える。実は昨年度、この20年間で最多の1万5818人に達した。この年、1~9月までに1万人を超え、さらに膨れ上がった。前年度と同様の傾向を辿っていることを警告と受け止めたい。
その原因は何か。大会で主催者の渡邉健二会長は、墜落・転落等の荷役災害が増加していることを強く指摘した。被災場所の多くを荷主等の構内で発生していることから、荷主と連携した防止策の強化を求めた。具体的な指示をあいさつで示したことに、大会を単なる参加で終わらせてはならないと言外に込めている。
厚生労働省によると荷役作業中の死亡災害の約8割が、「墜落・転落」「荷崩れ」「フォークリフト使用時の事故」など荷役5大災害と呼ばれる事故で占める。
そのうちフォークリフトによる死亡災害は昨年が4人、一昨年は8人と直近3年で19人が亡くなった。軽んじることができない数字だ。
さて全産業の状況はどうだろうか。2008年度以降、フォークリフト死亡事故は毎年約30件、死傷事故は2000件前後発生している。陸上貨物運送事業に限らず製造業などで後を絶てていない。
フォークリフトメーカーなど50社で組織する日本産業車両協会は今月、「フォークリフト安全の日」の創設を決めた。増加する事故へ歯止めをかけるため、イベントを通して利用事業者などに安全を呼びかける。
働き方改革が加速するなか今後労働力確保へ、女性や高齢者、外国人の採用が増える見込みだ。熟練オペレータが減少するなか、いかに多様な労働者へ指導していくかも課題になる。イベントでは、「災害なき現場」の後押しとなるよう強いメッセージを望みたい。