可能性秘める貨客混載

宅配便の貨客混載(客貨混載)輸送が広がりを見せている。

新潟県内で「ほくほく線」を運行する北越急行と佐川急便は、旅客列車に旅客と宅配便を混載する貨客混載を今秋から試行し、来年度から本格実施する。

専用のカゴ台車を製作中で、うらがわら駅~六日町駅間で、上下線の最終電車を利用して混載輸送する。

佐川急便にとっては、定時運行と安定輸送を実現できる鉄道を幹線輸送に活用することで、渋滞などによる到着遅延を防止でき、安定的な幹線輸送を実現できる。また、モーダルシフトであることから、環境負荷低減にも寄与できる。

北越急行にとっては、北陸新幹線開通による在来線特急列車の廃止に伴い、2015年3月期決算が11億円の赤字になるなど厳しい経営状況の中、余力のある輸送力を活用して新たな収益を確保する狙いがありそうだ。

京都市で京福電鉄と、岩手県で岩手県北バスと、宮崎県で宮崎交通と「客貨混載」を行っているヤマト運輸は、この1日から宮崎交通と路線バスを利用した客貨混載の路線を拡大した。

ヤマト運輸が京福電鉄と「嵐電」を利用した宅配便輸送を開始したのは2011年5月。当時の問題意識は、環境負荷の削減だった。京福電鉄にしても、「京都議定書」を採択した京都に本社を置く企業として、環境保全の推進がテーマだった。

一方、昨年6月にヤマト運輸が岩手県北バスと路線バスによる宅急便輸送を開始した際には、「長距離ドライバー不足などから物流網の維持が困難になるケースが増えてきており、物流網を維持するための物流の効率化が課題」としていた。

今回の佐川急便と北越急行についても、佐川急便では、今後深刻化する労働力不足に備えて、様々な輸送モードとの連携を模索する必要があるとし、その一環であるとの考えを示している。

公共交通側にとっても、乗客数の減少などから路線網の維持が困難になるケースが増えており、生産性向上が経営課題となっている、

交通政策審議会と社会資本整備審議会は昨年12月、過疎地等での物流網維持に向けて、バスや鉄道の輸送力を活用した貨客混載の検討を進める必要があると指摘したほか、都市内物流でも、トラックドライバー不足対策の観点から、都市鉄道など旅客鉄道の空きスペースや空き時間帯の輸送力を活用した貨物輸送を検討すべきだと指摘していた。

バスや鉄道を活用した貨物輸送は、まだまだ多くの可能性を秘めているように思える。