宅配便と自動運転技術
ヤマト運輸とディー・エヌ・エー(DeNA)は20日、自動運転を活用した次世代物流サービスの開発をめざす「ロボネコヤマト」プロジェクトを始動させたと発表した。
「ロボネコヤマト」プロジェクトは、DeNAの自動運転技術に関するサービスと、ヤマト運輸の物流ネットワークを組み合わせ、自動運転機能を備えた専用の配送車を開発。専用車両は市販車をベースに、後部座席に荷物の保管ボックスを設置したもので、この自動運転車両を使って、来年3月から1年間、国家戦略特区で実用実験を実施する。
実用実験は「オンデマンド配送サービス」と「買物代行サービス」の2種類。オンデマンド配送サービスは、顧客が望むときに望む場所で荷物を受け取ることができるサービスで、スマートフォンで荷物の現在地や到着予定時刻を確認することが可能だ。買物代行サービスはネット上で購入した地域の複数商店の商品を、オンデマンド配送サービスを通じて一括配送するサービスだ。
2016年は、宅急便が誕生してから40周年を迎える節目の年である。同社は、受け取りニーズの多様化に応え、コンビニエンスストア受け取りやオープン型の宅配ロッカーの設置など、受け取り場所の拡大に取り組んできた。
今回のプロジェクトについて、ヤマト運輸の長尾裕社長は、「顧客が望む時に、望む場所で、望むモノが手に入れられる世界を実現する」と話した。“ラストワンマイルのオンデマンド化”である。
ネット通販などECサービス、フリマアプリの増加によって配達する荷物は増えている。足元の宅急便取扱個数は2016年度第1四半期(4-6月期)で約4億3000万個と、10年前に比べ6割超も増えている。だが、配送コストは上昇し、1個当たりの単価は下落している。
その一方で、高齢化により労働力人口は減少している。物流業界、とりわけトラック運送業のドライバー不足は深刻さを増している状況だ。現状の労働環境を考えると、高齢者や女性が物流の現場で活躍するのにはなおハードルが高い。
宅配便に自動運転技術が加わることによって、女性や高齢者などを雇用しやすくなることが期待される。
自動運転技術は、宅配便のみならず、トラック輸送全体にも一定のインパクトを与えることは間違いない。東京オリンピックが開催される2020年を目途に、さまざまな自動走行サービスが実用化する見込みだ。物流分野でも、ドライバーの労働負荷軽減により、人手不足が解消されることが期待されている。