安全トライアングルの定着を
来年度からの5カ年による事業用自動車総合安全プランの素案が提示された。それによると、重傷者数や各業態の特徴的な事故に対する削減目標が新たに設定される。また、現行プランで推進してきた行政・事業者・利用者による〝安全トライアングル〟も継続する方向で取り組みの定着化が期待される。
削減目標の設定とともに、取り巻く環境変化をしっかりとらえ安全対策を講じる必要がある。プラン案には新型コロナウイルス感染症拡大や、激甚化・頻発化する自然災害への対応策も重点的に記しており、安全確保によるより円滑な輸送を確実なものにしたい。
〝新たな日常〟への移行、社会の変容に対し臨機応変に必要な対策を講じるにも〝安全トライアングル〟の意義は大きい。相互的な取り組みが安全確保に相乗的な効果を生み出す。さらなる事業環境の変化が想定される次期プラン期間においてより有用な連携が求められる。
総合安全プランは2009年に策定され、その後の状況変化を踏まえ、17年に現行の「プラン2020」として見直し、抑止目標を定めて事故削減に取り組んでいる。
しかし現行のプランで定めた20年までに死者数235人以下の全体目標は達成が厳しい状況であり、根絶を掲げた飲酒運転は依然として散見される。
飲酒運転事故はその多くがトラックだ。再び増加傾向に転じている。次期プランの素案が示された1月22日の国の検討会では重点テーマの1つに掲げる飲酒運転事故の対策も議論された。18年に報告された事業用自動車飲酒運転事故40件のうち、点呼前飲酒の事案18件、点呼後飲酒の事案20件と二分される傾向や、経験年数の短い運転者による事故が多い状況など明らかになった。
こうした事案を踏まえ、点呼の正しいタイミングの周知や、アルコール検知器の要件追加、事業者の優良取り組み事例の周知など対策の方向性が示されたが、委員からは「依存症を健康管理の問題として対策を検討すべき」など意見があり、より広範な見地からの施策も必要だろう。
コロナ禍で運転者も心の負担を抱える。アルコールに手を出してしまうケースも否めず、こうしたケアの面も含めた対策も問われる。
飲酒運転はその行為自体が反社会的であり、重大事故につながる可能性も高い。業界全体の信用失墜につながる。エッセンシャルワーカーとしての社会の期待を踏みにじってはならない。