実効性ある転嫁対策を
トラック運送業の直近の景況指標からは荷動きの回復で売り上げは上向くも収益の改善が進まない。燃料価格がここにきてさらに上昇局面にあり先行き懸念材料が増す。
国土交通省のコロナ感染症による影響調査では、12月の運送収入が2年前より2割以上減少した事業者の割合は11%(11月14%)に減少し、「影響なし・増加」は49%(11月45%)に増え、これまでの同調査では最も高い割合である。既に半数はコロナの影響を受けていない。ただ年末にかけての活発な荷動きも反映されたようで、扱い品目による開きも続いている。
帝国データバンク(TDB)調査による12月の運輸・倉庫業界の景気DI40・3は3カ月連続の改善でコロナ前の2020年1月(39・5)を上回った。
全国中央会の中小企業月次調査による12月の運輸業の売上高DIは12・4と4カ月連続の改善で2ケタ指標は4年ぶり。その一方で、収益状況DIは2カ月連続の改善ながらもマイナス30台にとどまる。
こうした中で24日の軽油店頭価格が前週比1・8円高の150円と13年3カ月ぶりの150円台を記録した。燃料高騰はとりわけ中小事業者の収益を圧迫する。
TDBの12月調査では運輸・倉庫業界で仕入単価が前年より上昇した企業のうち、販売単価も上昇した割合は19・2%(全体43・8%)にとどまる。25業種別では紙加工品製造(10・9%)、出版・印刷(17・7%)に次いで低い。8割以上が価格転嫁できていないのが現状だ。
価格転嫁については政府が対策を取りまとめたが、先ごろ全日本トラック協会がトラック運送事業者の窮状への理解と安定輸送の確保へ、「燃料サーチャージ制の導入」と「標準的な運賃の活用」について国交省との連名で荷主企業約4万5000社に文書とパンフレットを送付した。
転嫁対策の実効性がなければ中小事業者の収益回復は厳しい。また、事業者側も「標準的な運賃」の届出推進が急がれる。
運輸労連の難波淳介中央執行委員長は、今春闘方針を採択した25日の中央委員会で全事業者の6割が標準的な運賃が未届けであることに対し、時限措置であることを認識し届出ることを強く呼びかけた。
現下の感染再拡大においてもトラック運送業は物流を止めない使命感で懸命に取り組んでいる。その物流維持には人材確保である。物量の回復に伴い人手不足感も強まっている。賃上げ原資の確保にも取引適正化は待ったなしだ。