実運送の労働環境改善を

「道路貨物運送業」の倒産件数は4年連続で前年を上回り、とくに人手不足に関連する倒産が急増している。
東京商工リサーチ(TSR)の調査では、昨年の道路貨物運送業の倒産件数は前年比14%増の374件で、これは2010年(376件)に次ぐ。このうち人手不足関連倒産が前年の41件から71件と倍増近い。人件費高騰に、後継者難、求人難などが要因である。
物流業界の新年会では、時間外労働の上限規制が適用された「2024年問題」の影響や、改正物流関連2法への対応を中心に発言が聞かれた。24年問題は対策の効果や物量が低調なこともあり、現場では大きな混乱はみられないようだが、人件費のコストアップはとくに小規模のトラック運送事業者の収益を圧迫し大きく影響している。
適正料金・運賃収受、価格転嫁に向けたサプライチェーン全体の取引適正化へ、国の施策、環境整備は進むが、トラックは多重下構造の中で小規模事業者の価格転嫁が難しい。人件費のほか燃料費も政府が石油元売り会社に支給する補助金が縮小されるなど、厳しい外部環境が好転する兆しは乏しく、倒産件数の増勢が懸念される。
こうした中で4月からは改正物流関連2法の1部が施行される。荷主・物流事業者に向けた荷待ち・荷役時間の短縮、積載効率の向上など規制的措置の努力義務と、貨物法では契約時の書面交付や実運送体制管理簿の作成などがある。
製造業、物流業、流通業などで構成する日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は、改正物流関連2法への対応で、物流統括管理者連絡推進会議の展開に注力するとともに、多重下請け構造問題では関連団体と連携を図りながら対応策を検討するとしている。
大橋徹二会長は多重下請け構造について、JILSの調査でトラック運送事業者の経常損益率が規模の大きさで年々格差が生じていることなどを挙げ、「ドライバーの待遇にも直接影響する。物流業界の持続可能性を脅かす深刻な問題であり早急な改善が必要」と指摘する。
昨年のトラック倒産では、人件費高騰とともに、後継者不在を理由に事業継続をあきらめるケースも3倍増と急増する。
物流効率化、取引適正化へ荷主の一定の理解は進むが、持続可能な物流の実現には、実運送を担うトラック運送事業者の労働環境の改善が不可欠であることを再認識したい。