実運送の適正運賃収受を

「トラック運送業における多重下請構造検討会」で、多重構造の上流、下流と、上下流をつなぐ取引ル―トの拡大の3つの観点から、取りまとめへの論点整理が示された。
昨年8月に発足した同検討会では、利用運送事業者をはじめ関係者へのヒアリング、実態調査を行い、前回の検討会でその結果を公表した。委員の意見を踏まえ、5日開催の第3回会合で事務局が検討の方向性を示したもの。
下請構造には、トラック運送事業者のほか様ざまな事業者が介在する。これらにも多重構造の改善へ規制的措置を講じる考えだ。
4月施行の改正物流法においても、契約内容の書面化や実運送体制管理簿の作成など、下請構造を可視化する措置が講じられる。
この中には元請事業者への健全化措置を努力義務化している。健全化措置とは、利用運送の概算額を把握し、荷主が提示する運賃・料金がそれを下回る場合、荷主に価格交渉を行ことや、利用運送の総回数を制限する条件を付するなどだ。
トラック運送事業者のみに課せられる書面交付義務やこの健全化措置実施義務を、利用運送事業者などにも適用拡大することで、商慣行が抜本的に是正される。
一方、下流では、安価で条件の悪い仕事を引き受け、適正な競争を阻害する状況を改善する。〝浄化作用〟という強い言葉を用い、踏み込んだ措置を講じる考えだ。
国は監査やトラック・物流Gメンによる監視活動を強化しているが、裾野が広いため監視の目が届きにくい。委員の意見にもあったが、適正化事業のブッシュアップによる期待が大きい。また、遵法意識の低い事業者の市場からの退出を促す考えは、全日本トラック協会が進める事業認可の更新制導入の動きとも係わってくる。
違法白トラ行為の対策や荷主など発注側の違法意識の醸成も検討項目に挙げられ、関係省庁との連携強化が不可欠だ。
上流、下流の取引拡大では、これまでの議論でもマッチングサイトの活用を促していたが、さらに事業協同組合による共同受注や、複数の荷主・元請事業者の主導で運営する仕組みを例示した。
上流、下流における取引適正化と同時に、こうした多重構造を介さず安定的・継続的に取引できる方策が求められる。何より実運送事業者がしっかりとその仕組みに入り、適正運賃を確実に収受できる環境整備が肝要だ。