新たな協業・連携を模索

日本郵便がトナミホールディングスの株式を公開買付けで取得すると発表した。トナミHDの創業家代表、経営陣と連携したマネジメント・バイアウト(MBО)を目論む。日本郵便は郵便事業をコアとしながら、物流事業は協業による拡大を図り、全体の収益を底上げする狙いだ。
日本郵便の直近4-12月期における郵便・物流事業の業績は、売上高は増収(4・4%)も利益は379億円の赤字で前年同期横ばいにとどまる。郵便の取り扱いが減少の一途を辿る一方、荷物は増加傾向にあり、人件費、諸経費が増加する中で物流の収益拡大が課題。主力のラストワンマイル一本ではなく、企業間物流をいかに取り込めるかが焦点といえる。
日本郵政グループは郵便局ネットワークが最大の強み。グループ内の一体的なサービスの提供とともに、グループ外の多様な企業との連携により、顧客と地域を支える「共創プラットフォーム」を目指す姿に描く。
物流サービスも競争力を高めるにはさらなる連携が必要だ。既に大手物流事業者と様ざまな協業体制を組んでいるが、トナミHDとはグループ化することでより踏み込んだ協業が考えられる。
企業間物流では西日本を中心とするJPロジスティクスに対し、関東・北陸・中部を得意とするトナミHDとの連携で日本全国ネットワークへ収益規模を拡大する。共同営業、共同購入などの活用は国際物流事業(豪トールHD)やその他の事業の強化にもつなげる。
一方、今回の株式取得に関する一連の取引は、トナミ側から持ちかけた。上場のメリットが相対的に低下する中、創業家、経営陣によるMBОで非上場化を模索していたが、さらなる成長には外部の経営資源の活用が必須と判断し、日本郵便と定期的に意見交換を重ね、合意に至ったという。
MBОは経営陣による自社の買収。物流業界では大手事業者のM&A案件が相次ぐ中で、MBОについても昨年はトランコム、エスライングループ本社が実施している。上場廃止による資金調達の難しさはあるが、短期的な利益を追求する株主の意向に左右されず、長期的な視点で経営改革を進めるメリットがある。
物流の2024年問題への対応が、より円滑、迅速な事業継続へ経営体制を見直す契機ともなっているようだ。構造体な問題には一過性の対策では解決できない。物流大手の新たな協業・連携による業界再編の動きが注視される。