新たな連携・協働で持続的成長を鮮明に

改正物流法による荷主、物流事業者への規制的措置が4月から施行(努力義務)される。2024年問題で物流の停滞が懸念されるため、政府が「物流革新に向けた政策パッケージ」を打ち出したのが2023年6月。これをもとに様ざまな施策が講じられてきた。その中でも今回の規制的措置は関係する全事業者に課せられる。サプライチェーン全体の「行動変容」を促す。
国土交通省が2024年を「物流革新元年」と位置づけたように、昨年は物流革新のスタートの年であった。少子高齢化、都市部への人口集中など物流への課題は深刻化する。国が示す2030年の輸送能力不足(34%)を回避するにも、この規制的措置の実効性が求められる。何より荷主、物流事業者の関係者が全体最適を見据え、協力関係を構築することに尽きる。
規制的措置を議論してきた3省合同の検討会が取りまとめた報告書をあらためて振り返る。
「基本方針」には、物流に関わる様ざまな関係者が協力し、2028年度までに「5割の運行で、1運行当たりの荷待ち・荷役等時間を計2時間以内に削減(1人当たり年間125時間の短縮)」、「5割の車両で、積載効率50%を実現(全体の車両で積載効率44%に増加)」とある。
「判断基準」では、発着荷主、連鎖化事業者(フランチャイズチェーンの本部)、物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)に対し、物流効率化へ取り組むべき措置(①積載効率の向上等、②荷待ち時間の短縮、③荷役等時間の短縮)の努力義務を課す。
そして2026年4月からは、一定規模以上の荷主、物流事業者(特定事業者)に物流生産性向上の中長期計画の作成・提出、報告義務の措置が講じられ、特定荷主には物流統括管理者(CLO)の選任が課せられる。
荷主側も自主行動計画の策定など実践する動きにあるが、業種・業界で進捗には開きがある。
東京商工会議所のアンケ―ト調査(昨年8月末時点)では、改正物流法を「知っていて内容を理解している」のは荷主(823社)の6・8%、物流事業者(109社)の19・3%にとどまる。法改正自体「知らない」は荷主で過半数(54・1%)、物流事業者も3割超(33・9%)である。
今後、規制的措置は政省令とともに、取り組みを例示した解説書を策定する。物流現場の実態を踏まえ、広範に周知徹底を促す施策が肝要だ。
一方で、物流の持続的成長を促すDX・GXをはじめ先端技術の活用、インフラ整備の進展が期待される。
国が10年程度で倍増を目指すモーダルシフトは、鉄道貨物、内航海運に加え、ダブル連結トラックや自動運転トラック、航空貨物にも広げる。陸・海・空を総動員した〝新モーダルシフト〟は今年度補正予算にも反映し、持続的成長の方向をより鮮明にする。
自治体、地域との共生も進む。物流施設の開発では先端技術を駆使した効率化、省人化とともに、雇用促進、環境保全、防災対策に、地方創生、産業振興への取り組みにも広がる。国交省が昨年立ち上げた「物流施設の今後のあり方に関する検討会」では、中継輸送や幹線輸送拠点で公的組織による開発、運営方針が議論される。多くの自治体で物流業界との包括的な提携が図られ、物流に対する期待は益々高まる。地場のトラック運送業も地域と一体となった強みを発揮したい。
2025年は物流の持続的成長をより鮮明にし、業界の魅力度を高める年。これに向けた関係者による新たな連携、協働に注視したい。