新会長のリーダーシップに期待

全日本トラック協会の坂本克己会長が、トラック運送業界の豊かな労働環境を実現するため、「労働時間が短縮されても、賃金が下がっては意味がない。効率のよい仕事をし、生産性向上の果実を労働条件改善に振り向ける必要がある」と長時間労働の是正、生産性の向上も含めて、トラック運送事業の働き方改革を進めていく方針を示した。

新会長は6月29日の第93回通常総会で就任し、13日の理事会では15人の副会長全員を決めて「坂本新体制」をスタートさせた。その理事会終了後に就任後初めて物流専門紙記者と会見し、協会運営にあたっての考え方などを述べた。

総会で坂本新会長は「『現場で働く人々によって、豊かな労働環境を実現する』ことをめざしてドライバーの幸せに全力を尽くしたい」と所信を述べ、総力をあげてトラック運送業界の発展に取り組んでいく姿勢を明確にした。

記者会見では「トラック運送業を、そこで働く人が誇りを持てるような仕事にしたい。そのためには適正運賃収受が必要だ。普通の運送会社が健全経営をできる、きっかけ作りをしたい」と、ドライバーがトラック運送業界を「いい業界だ」と自信や誇りを持って働ける環境の実現をめざす考えを強調した。

具体的なイメージとしては、ドライバーが普通に働けば世間並の給料をもらえ、安心して働くことができる業界のことであろう。そのためには、荷主から再生産可能で持続可能な適正運賃・料金を収受できるような環境を作っていかなければならないだろう。

一方で、政府全体でトラック運送業などの長時間労働是正を支援しようという動きが出始めた。政府は6月29日、自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議を立ち上げ、長時間労働是正に向けた関連制度の見直しや支援措置の検討に着手した。当面は8月を目途に2017、18年度に取り組む施策をまとめる。

国土交通省幹部は「どのような後押し、支援ができるかを政府全体で考えていくことになる」と話している。

トラックの深刻なドライバー不足解消には、生産性を向上して収益を上げ、労働分配で還元しなければ対応できまい。いま、政府をあげて取り組もうという機運が高まっているのは、それだけ人手不足が深刻化しているということの証左だ。

「働く人がこの運送会社に人生をかけようと思えるぐらい、魅力ある産業にする必要がある」という新会長のリーダーシップに期待したい。