新標準運送約款の届出促進を
標準貨物自動車運送約款とは、「国土交通省が制定するトラック事業者と荷主の契約書のひな形」である。
国交省は昨年11月、この約款を一部改正し、適正な運賃・料金を収受するための環境整備を図った。
約款改正の趣旨は、取引環境の適正化である。運賃・料金の新しい収受ルールのポイントは、①「運賃」と「料金」の区別を明確化する②「待機時間料」を新たに規定する③附帯業務の内容をより明確化する――の3つだ。
運賃は運送の対価であること、料金は運送以外の役務等(附帯業務、積込み・取卸し、荷待ち時間)の対価であることを明確化した。
運賃・料金の収受ルールが新しくなって7カ月が経ったが、料金変更届出を行ったのは、対象事業者の半数にも達していない。
国交省の調査によると、6月15日現在で対象事業者5万7008社のうち、約款に基づく「料金変更届出事業者」は2万6413社と46・3%にとどまっている。
料金の未届出事業者は、約款改正の趣旨を理解せず、旧約款で認可を受けた事業者が9260社。手続きを一切行っていない事業者は2万1335社で、形式上、標準約款へ移行していると見なされているため、料金変更届出が必要だ。
約款は事業者と荷主との契約書であり、ルールであるため、荷主、事業者が行うべきことがある。
荷主が行うべきことは、「運送状に『運賃』『料金』を区別して記載する」こと、「運送以外の役務等が生じる場合はトラック事業者にその対価となる料金を支払う」こと。
事業者が行うべきことは、「新標準約款を営業所に掲示する」こと、「運賃・料金表の変更届出を行う」こと。
この新約款の内容について荷主に理解を深めてもらおうと、国土交通省、厚生労働省、経済産業省、農林水産省、公正取引委員会の5省庁がリーフレットを作成した。
5省庁と全日本トラック協会は6月、連名で荷主企業・荷主団体へ適正取引の推進と長時間労働の是正に向けた理解と協力を得るための働きかけを行った。協力依頼文書とリーフレット配布は6万部になるという。
全ト協総会で坂本会長は、「事業者が足並みを揃えなければ、社会に不信感を与える」と、新約款への取り組みに業界の結束を訴えた。
荷主に理解と協力を求めている時期だからこそ、トラック運送事業者、業界は新約款の趣旨を理解し、移行を促進させるべきだ。