日常の健康状態管理に留意
事業用自動車の健康起因事故防止に向け、国土交通省は2018年度から脳疾患の早期発見に有効とされるスクリーニング検査に積極的な事業者からモニター事業者を選定し、脳健診普及へのモデル事業を行っている。調査は受診から3年にわたって行い、その追跡結果から実態が把握できる。
先ごろ開いた事業用自動車健康起因事故対策協議会で、最近の調査結果が報告された。20年度に受診した4484人(トラック2066人)のうち0・6%にあたる26人(トラック4人)が「異常所見あり・緊急性あり」と診断され、21年度に行った追跡調査では、このうち運転者に対して、半年までに何らかの対応をした事業者は72%だった。
残りの28%にあたる10件(トラック1件)は半年までに事業者が対応しなかったケース。その後受診して7件は現在において通常乗務となっているが、なぜ事業者が適切にフォローしなかったかを追求する必要がある。
過去8年間で健康起因事故を起こした運転者2177人のうち、心疾患、脳疾患、大動脈瘤及び解離が31%を占める。うち死亡した運転者は374人で、心疾患54%、脳疾患11%、大動脈瘤及び解離が13%を占めるという。
とくに脳・心臓疾患は運転中の発症により急激な体調悪化で重大事故につながることが想定できる。国は健康状態の把握を適切に行わずに重大事故を招いた悪質な違反について行政処分を強化している。社会的関心度も高まっており、あらためて健康起因事故が及ぼす影響の大きさを認識したい。
事故報告規則に基づき報告のあった健康起因事故の件数は、20年度調査ではコロナ禍による運行量の減少もあり全体では減少したが、トラックは増加している。事業者の意識の高まりが増加傾向に反映されていることもあろうが、件数の増減に関わらず事故そのものを抑制するべくできることをしっかり実践したい。
国交省では主要な疾病に関するスクリーニング検査について、医学的知見を踏まえ事業者としてとるべき対応を含めたガイドラインを作成し、スクリーニング検査の導入拡大に取り組んでいる。また、高齢者対策では年度内にも視野障害に関する運転リスクや早期発見への健診周知などマニュアルを策定する。
トラック運送業は社会になくてはならないエッセンシャル事業者としてこれらを活用しながら、健康状態管理の在り方など日頃から留意する必要がある。