業界が同じ方向を向く

国が毎年、春、秋に実施する「全国交通安全運動」には、4月10日、9月30日を「交通事故死ゼロを目指す日」に設定している。トラック運送業界もこれと連動し、全国統一による「交通事故ゼロを目指す日」を新たに設けた。
全日本トラック協会が「4月10日、9月30日は事業用トラックの交通事故ゼロを目指す日」と題したチラシを作成し、事故状況や注意喚起を示し広く周知を図る。死亡事故に限定せず、交通事故そのものをゼロにしようと、トラック運送業界全体で事故防止意識の醸成に努める。
事業用トラックによる悲惨な交通事故は後を絶たない。死者・重傷者数は増減を繰り返し、飲酒運転による人身事故は急増している。
昨年の事業用トラックが第1当事者となる死亡事故件数は、11月までで179件と前年同期(170件)を上回る。年間では2022年に169件まで減少したが、23年は199件、24年も増加傾向で、このペースでは再び200件超えの可能性がある。
さらにトラック業界としてゼロ目標を掲げる飲酒運転事故も昨年は30件(物損事故含む)発生した。前年の39件は下回るが、7月の群馬県伊勢崎市の事案など死亡事故も発生している。こうした事案が続発すれば、社会からトラック運送業界に対する信頼を失う深刻な事態に陥る。
飲酒運転はもとより、あおり運転、ながらスマホ、速度超過など、プロドライバーとして、あってはならない悪質な反社会行為を払拭し、輸送の安全確保を今一度徹底しなければならない。「交通事故ゼロの日」を設けることで、業界が同じ方向に向く機会をつくることは大いに意義がある。
全ト協では昨年8月の交通対策委員会で、交通対策小委員会が提言「事業用トラックによる重大事故及び飲酒運転事故防止への対応について」を提出し、今月7日に開催された同委員会でその取り組みが承認された。
提言には都道府県トラック協会で各種事故防止活動に取り組む中、全国的な統一日がないことから、国の「交通事故死ゼロを目指す日」とタイアップする形で、全ト協の運動の実施要領にも「交通事故ゼロを目指す日」盛り込むこととしていた。
トラック運送業界は10月9日の「トラックの日」に合わせて様ざまな発信が行われている。「交通事故ゼロを目指す日」も継続的な啓発活動として内容の充実を図り定着させたい。