標準運送約款は原点

トラックドライバーの労働環境改善を図る取り組みが急ピッチで動いている。年度末に差しかかり物流品目別にそれぞれ懇談会を開いた。
加工食品懇談会では受発注条件の見直しと荷待・荷役・検品などに要する各時間の削減を中心に取り組む。建築資材懇談会は、集合住宅・事業用不動産、戸建の2分科会を立ち上げ、荷卸し作業や運んだ資材を持ち帰りといった現場で顕在化してきた課題解消を探っていく。

同じ貨物自動車運送事業だが、輸送する荷物は会社によって異なる。運ぶモノが違えば輸送方法や荷役なども変わる。一方で荷主の都合による荷待ちや荷役は、大なり小なりどこも常態化していた。それがドライバーの長時間労働となって表面化した時には、人が集まりにくい業種となってしまった。
同業だけど異なる業種。輸送する貨物によって知らず知らず見えない垣根を作ってしまったかのように、従来の取引環境のまま耐えてきた。昨年、パイロット事業などを経てまとめた「長時間労働改善に向けたガイドライン」で、ぜひとも健全なパートナーシップを構築してもらいたい。

運賃は、トラック運送会社の基盤である。一昨年、運賃と料金の収受を推進するため、標準貨物自動車運送約款が改正された。適正な運賃と付帯業務、待機時間といった荷役には対価として料金を収受できることが明確に示された。トラック運送事業にとって原点とも言える十分な内容だった。
「受け身」の業界から脱却する千載一遇の好機と期待が持てるはずなのだが、いまだ厳しい現実がある。東京都トラック運送事業協同組合連合会が今年1月、200社を対象に実施した運賃動向調査によると、回答した8割あまりが希望する運賃を収受できていなかった。運送業の人手不足が社会的にクローズアップされているにもかかわらず一方的に取引先から契約解除、さらには過積載を求められる事案も見受けられた。何のために運送約款を改正したのだろうか。新運送約款の内容に追いついていない問題を、懇談会でいま一度議論して欲しい。
きょう1日は、入社式を行った企業も多いだろう。初めて新卒者を迎える会社もあるだろう。何かを始めるには良い時期だ。目覚ましい技術進歩で運転を支援するシステムが生まれ、くるまは今以上に人にやさしい乗り物となるに違いない。トラックは「安全」が社会の認識となった時、若者の選択肢も広がる。その時を想像して、新入社員を見つめれば自ずとビジョンが浮かぶはずだ。