災害時対応の役割明確に
全日本トラック協会が交通対策小委員会の下に、災害物流専門家育成プログラム策定ワーキンググループ(WG)を発足させ、育成方法など検討を始めた。年度内に育成プログラムのアウトラインについて議論をまとめ、来年度にはテキスト作成、研修をスタートさせる運びだ。
東日本大震災、熊本地震、昨年の西日本豪雨と大規模な自然災害が相次ぎ、今後も首都直下地震や南海トラフ地震の発生が予想される。重要物流道路の指定など、ハード面の整備が進む一方、被災地の物資輸配送、拠点運営を担う人材育成のソフト面の対応も急務である。
全ト協の緊急輸送の取り組みをみると、2015年12月までに47都道府県トラック協会が都道府県と協定を締結させた。熊本地震、昨年の西日本豪雨、北海道胆振東部地震では政府のプッシュ型支援による緊急物資輸送手配を実施。緊急輸送の実績は東日本大震災でトラック車両数約1万600台、熊本地震で約1270台。昨年も西日本豪雨266台、北海道地震43台が稼働した。トラック運送業界が果たすべき役割はますます大きくなっている。
こうした過去の大規模災害においても、支援物資の受け取り・拠出拠点での物資の滞留で、避難所に支援物資が円滑に流通できない課題が浮き彫りとなり、今回のWG発足に至った。
12日の第2回会合では東日本大震災、熊本地震で現場対応した委員が当時の状況を説明し、自治体と協会の任務分担の明確化と情報共有、用途に応じた物資輸送の使い分けや業務停滞の要因分析など要点が聞かれた。
これら課題を洗い出し育成プログラムに反映させていくうえでも、過去災害の対応における良い事例、悪い事例も関係者で共有することが重要である。
加えて自治体との役割分担を明確にするためにも関係行政との強い連携が不可欠だ。
国は今年3月末に自治体向け「支援物資のラストマイル輸送に関するハンドブック」を策定した。車両確保や物資拠点運営に向け平時から行うべき取り組み、都道府県・市町村それぞれの立場で発災時の組織体制や輸送手配、物資拠点の開設・運営オペレーションを例示している。ハンドブックを活用した実働訓練との連携もあり、年度内には本省ベースでの訓練も検討しているという。
災害物流専門家育成WGでは自治体担当者との意見交換の場も予定される。役割、スキルなど行政側にもわかりやすい制度構築が望まれる。