物流による新たな価値創出に挑む
2022年の幕が開けた。
新型コロナウイルス感染症を起因とした様ざまなリスクが依然としてトラック運送業界の経営に重くのしかかる。一方でこの環境下において、一段の生産性向上、そしてデジタルトランスフォーメーション(DX)に代表される物流の新たな価値創出の方向性も示された。コロナを契機に進むべき道標もより鮮明になった。
昨年6月に閣議決定された5カ年にわたる「総合物流施策大綱」の1つの考えに〝担い手にやさしい物流〟が掲げられたように、物流業界の喫緊課題は人手不足であり、働き方改革が推し進められている。「ホワイト物流推進運動」による荷主や一般社会への理解・協力、「働きやすい職場認証制度」(ホワイト経営)による物流現場の見える化、改正トラック事業法による「標準的な運賃」「規制の適正化」「荷主対策の深度化」といった措置を事業者が活用、実行することだ。個々の取り組みとともにこれら施策1つひとつをしっかり周知、実施することで働き方改革が成果として実を結ぶ。
2024年4月にトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制が罰則付きで適用される「2024問題」まであと2年。2022年は働き方改革総仕上げの年との決意を持って臨みたい。
まずもって改正トラック事業法では「標準的な運賃」の届出である。こちらも23年度までの時限措置だ。恒久的な制度として要求する声も強まる中で、昨年11月時点での全事業者に占める届出割合は4割にとどまる。とくに都市部の関東、近畿圏は低水準であり、これらの動向が今後の情勢を左右する。適正な運賃・料金収受へ粘る強く交渉を進めていきたい。
燃料価格高騰も重なり、荷主との交渉の難しさも伝わってくる。国は荷主や元請けへ取引適正化を強く求め、トラック運送事業者には荷待ちや過積載など違反原因行為にあたる情報提供を求めている。荷主も経営サイドはその意識が高まっているようだが、実際の交渉現場ではその通りに進まない。物流危機意識は末端の現場まで伝わっていない。働き方改革道半ばとならないよう、とりわけ中小零細企業の現場に即した支援措置が望まれる。
コロナ禍で物流の重要性が再認識されたが、災害時の後の〝喉元通れば熱さも忘れる〟では意味がない。総合物流施策大綱においてもこうした物流の広報がKPI(重要業績評価指標)で記される。正しい理解を促すことで、トラックドライバーへの誹謗中傷行為の解消、宅配再配達の是正など労働環境が改善され、その積み重ねが良質な働き手の獲得につながる。
SDGsの動きが活発だ。脱炭素化の実現にはCO2排出量の2割を占める運輸業が果たすべき役割は大きい。物流を維持しながらこれに確実に応えるにも事業継続の強い基盤があってのことだ。
トラック運送業はエコドライブにEVや燃料電池車などの導入検討とともに、生産性向上の側面からも脱炭素化に大きく貢献する。サプライチェーンの標準化、DXは企業・業種を越え省力化を加速化させ、その可能性は一段と膨らむ。これら成果、実績も新たな価値創出として広く発信していく必要がある。
トラック運送業界は地域の経済と暮らしを支える。当然のように受け止められるその使命は大きな価値である。コロナ禍で当たり前の日常の有難さが再認識されたように、トラック運送業界はその存在感を示す必要がある。
難局を乗り越え、新たな価値を創出する飛躍の年としたい。