物流の今の姿 しっかり訴求
新型コロナウイルスの新規感染者数が抑えられ、消費、生産の本格回復が期待される一方、引き続き燃料価格の高止まりや材料不足が企業収益を圧迫する。これら下振れリスクもコロナ起因によるものが多い。
コロナを起因とした影響では、トラックドライバーに対する誹謗中傷も一時ほどではないようだが、まだまだ利用者からの迷惑行為が報告されている。
運輸労連の難波淳介中央執行委員長は9日の運輸セミナーの冒頭挨拶で今年を振り返り、コロナ禍において物流の重要性の認識が高まる一方、「感染症の不安感の中でも物流を止めてはならないと懸命に作業・運転するドライバーに対して、耳を疑う誹謗中傷が各地で発生していたことは忘れてはならない」とし、送料無料表記とともに大きな問題としてしっかり留意する必要があると指摘する。
先ごろ交運労協が公共交通や物流関係など約2万人を対象に行ったアンケート調査では、全体の46・6%が直近2年以内に利用者から迷惑行為の被害にあったと回答し、日常的に発生している実態が明らかになった。
トラックは全体の54・4%と半数を超え、最も印象に残る迷惑行為は「暴言」や「威嚇・脅迫」だ。これには「毅然と対応した」との回答もあるが、「誤り続けた」が最も多く、「何もできなかった」、「危険を感じて退避した」といった回答も目につく。
自社の企業が迷惑行為への対策を行っているかの問いには「特にされていない」との回答が全体、各業種とも最も多く、現場が不安を抱えていることが分かる。
とくに宅配市場はコロナを契機に裾野が広がり利用者との接点機会も増す。非接触・非対面による新たなサービス提供も広がっているが、利用者とのトラブルに遭遇するケースは想定され、事業者は適切な対策、迷惑行為によりストレスを感じる被害者へのケアなど施策が急務だ。
トラック運送業界は2024年4月からのドライバー時間外労働上限規制適用による〝2024問題〟に直面し、働き方改革が急ピッチで進められているが、こうした現場の迷惑行為が後を絶たない状況では業界のイメージ低下を招きかねない。
荷動きの回復に伴い人手不足感も再び強まる気配にある。まず今の物流現場からの人的流出を防ぐととともに、いかに魅力度を高めていくか。コロナを契機に重要度が増した物流の姿を今一度しっかりと世に強く訴え続ける努力が必要だ。