物流の価値を可視化し転嫁
時間外労働時間の上限規制がトラックドライバーにも適用され1年となる。物流の2024年問題の影響について、物流機能そのものの大きな混乱は表面化していないが、人件費をはじめとした負担増は確実に事業者の収益を圧迫している。
燃料費や車両費などが高騰する中で、地域の経済、生活を支え、物流を維持するため、雇用の確保から安全対策、さらにDXなど効率化への投資はとりわけ中小、小規模事業者に大きな負担となる。こうした事業者の努力を物流の価値として可視化したい。
帝国データバンクが行った価格転嫁の実態調査によると、コスト上昇分に対する価格転嫁率は、全体の40・6%に対し、運輸・倉庫業は31・3%でともに前回調査を下回った。コストの上昇に対して、消費者離れや取引先からの反発を懸念して値上げを躊躇する動きが強まっていると分析する。
運輸・倉庫業は27業種中21番目。うち一般貨物自動車運送業の価格転嫁率は30・2%とさらに低い。24年問題を契機に価格転嫁を進める動きはみられるものの、車両費の高騰やガソリン補助金の縮小、重層的な取引構造から直接的な値上げ交渉が難しいことも要因とみている。
物流業界における労働力不足の問題は2024年だけのものではない。14日に開かれた政府の「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」で、石破茂総理は荷主などに対する一層の価格転嫁の推進とともに、30年度までを「集中改革期間」とし、「中長期計画」の見直しを反映した「総合物流施策大綱」の策定――を指示している。
4月1日で改正物流法が施行される。関係するすべての事業者に物流効率化に関する努力義務が課せられる。その成果の目安となるのは、待遇改善の原資となる、運送事業者の適正運賃・料金収受であり、とりわけ実運送事業者の状況をしっかり確認することが肝要だ。
国土交通省の鶴田浩久物流・自動車局長は予てから「価値を価格に」を自身のテーマとして主張してきた、今回の規制的措置は「適正運賃・料金収受の近道」ととらえる。荷主、物流事業者、関係者間の協力、連携を促し、生産性を高め、価格に反映される価値の高いサービスを実現させる。
トラック運送業界の春闘では、先行組で増額が相次ぐが、他産業との格差拡大も懸念される。人手不足は物流業界だけのことではない。コスト上昇分はもとより、物流の価値をしっかりと認識し転嫁する姿勢を示したい。