物流業界の脱炭素化進む
脱炭素化へ物流業界が着実に前進している。
日本通運が陸・海・空各輸送モードからCО2排出量を事前に算出、提供するサービスを始めた。輸送モードの選択でCО2削減を優先したい、排出量の計算が分からないといった課題解決ツールになる。集配距離を地図データと連携して算出するもので、第三者機関の検証を受け、公的な手続きに利用できる。CО2排出量の安定的な「見える化」が広がりそうだ。
世界的には気候変動に伴う業績への影響の開示等が義務付けられる方向にあり、こうした環境データの「見える化」の必要性はますます高まってくる。
ANAは持続可能な航空燃料(SAF)による貨物便の利用で、物流事業者の脱炭素化の取り組みを支援するプログラムを立ち上げた。第一弾として日通、近鉄エクスプレス、郵船ロジスティクスが参加。間接的に発生するCО2排出量の削減についても国際基準(スコープ3)で求められており、航空輸送は重要な要素だ。
リーディングカンパニーが先行して取り組みを示すことで、サプライチェーン全体での意識啓発につなげていきたい。
2050年カーボンニュートラルを実現させる、地球温暖化対策計画案において、運輸業界には次世代自動車の導入など高い目標が掲げられている。
これら普及には補助制度、税制上の優遇、インフラの導入や関連技術、サプライチェーン強化など包括的な措置が不可欠であり、それでも中小零細企業にとってはハードルが高い。しかし事例が増えていけばコストなど解決への道筋もより鮮明になってくるだろう。
EC市場の拡大で活況が続く宅配業界では電動化の動きが広がってきた。
SBSホールディングスはスタートアップのフォロフライが輸入販売する1tクラスのEVトラックをラストワンマイル事業で全面的に導入、グループのEC向け配送車両約2000台を5年でEVに切り替える。
宅配大手ではヤマト運輸が30年までに小型集配車両の半数に当たる約5000台のEV化を目指し、佐川急便は30年を目途に保有する7200台の軽自動車をEV化する方針である。
商用車のEV普及ではバッテリー交換式の開発実証も進められる。伊藤忠商事などが行うもので、これには地域の再エネ利活用や災害時の電力供給源の可能性も探る。物流の脱炭素化による地域社会への貢献の大きさもしっかと認識したい。