物流構造改革が前進した1年
新型コロナウイルス感染拡大への不安を抱えたまま年を越す。物流も荷動きや雇用の面など影響を多分に受けたが、ニューノーマルへの転換による非接触・非対面や、デジタル化など一段の生産性向上に対する業界の意識は高まった。
日本物流団体連合会が先ごろ行った調査では、ウイズコロナ、アフターコロナ下の物流業経営において過半数の事業者が「非接触型、省人化、自動化など物流システムの見直し」を必要な対応と回答しており、厳しい経営環境下においても物流の構造改革は着実に前進している。
今年はまた、2年前に成立した改正事業法の施行により、その実効性が着目されたが、まさに感染拡大のタイミングと時を同じくした。
「標準的な運賃」は、荷主側も経営が厳しい中で交渉が進まないのも事実である。しかし、法令を遵守した持続可能な物流には労働力確保が必然であり、そのためには運送事業者の収益源である適正運賃・料金収受がなくてはならない。
2024年4月からのドライバーの時間外労働上限規制適用を控え、今の労働環境が続けば〝ものが運べない〟ことに直面する。こうした現状を理解してもらえるよう粘り強く交渉する。行政も荷主対策には省庁連携でより踏み込んでいるが、さらなる周知徹底が求められる。
来年度からの次期物流施策大綱への提言がまもなく取りまとめられるが、骨子案には労働力不足対策と物流構造改革の推進ともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)と標準化の推進が掲げられる。デジタル化に対し予算や各支援措置が講じられるが、その前提となるのが標準化だ。古くて新しいこの問題も加工食品分野をはじめ進捗が見られる。先行事例を共有しながら物流DXを推し進めたい。
感染リスクを負いながらも〝物流を止めない〟思いで業務を遂行するドライバーをはじめ関係者の姿に社会から感謝の意が寄せられる。未だ誹謗中傷の言葉も向けられるが、エッセンシャル事業としての物流の位置付けが高まったことは確かだ。
災害時も含め国民生活と経済を支える物流がクローズアップされたことを追い風に、持続可能な物流へさらに生産性を高めることが重要だ。
当たり前の日常の有難みが再認識された1年でもあった。物流現場においても安全に的確に日常の業務を遂行する意識を大事に、地域、社会の期待に応えエッセンシャル事業としての存在を根付かせていきたい。