物流連携で新たな価値創出

持続可能なサプライチェーンの構築へ、荷主企業による業界、業種を超えた物流連携の動きが広がってきた。
花王とキリンビバレッジは、2月から長野県、神奈川県の両社拠点間で、空車の戻り便のトラックを活用したラウンド輸送を開始する。花王グループは、国内10カ所の生産工場から物流拠点への輸送、さらには小売店への配送を自社で担う垂直統合が強み。一方で変化する物流環境の動きに迅速に対応するため、業界を超えたパートナーとの共創にも踏み込む。
ラウンド輸送では、伊藤園と日清食品が、昨年7月から愛知県と静岡県の間で、往路に茶葉、復路に即席麺の運行を毎日実施している。
伊藤園は、昨年8月からはコカ・コーラボトラーズジャパンと愛知県内で共同配送を開始したほか、JA全農とは、飲料と米穀物のラウンド輸送を昨年11月から新潟・関東間で開始するなど、業界、業種を横断した効率的な物流体制を構築する。
一方、卸業界では三菱食品、PALTACが物流事業の連携・協働でこのほど基本合意した。拠点の有効活用や共同配送、新たなサプライチェーンモデルの開発にも取り組む。食品、日用品卸大手の両社は全国規模で小売業との商流・物流を担う中で「従来通りの方法で全国の流通網を維持することは困難な状況になりつつある」とし、業界の垣根を超えて連携する。
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の「2024年度会員アンケート調査」では、荷主企業の物流への認識は、「物流はコストであり、コスト削減が最優先事項」との回答が41・6%で、23年度調査(47・3%)より減少した。
その一方で、「物流は協調領域であり、同業他社との連携が重要」との回答が57・8%となり、23年度調査(42・0%)から上昇、「物流はコスト」の割合を上回った。22年度調査(35・7%)との対比では22・1ポイントと大幅な上昇だ。
24年問題に直面し、荷主も物流効率化へ主体的に動く。4月施行の改正物流法では、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務が課せられる。来年4月には特定荷主への義務付けがあり、これらに対応するべく発着荷主とも意識が変わってきたことは確かだ。
JILS調査では依然として4割が「物流はコスト」と認識するが、物流連携が効率化とともに新たな価値を創出する可能性をサプライチェーン全体で共有したい。