物流革新へ新たなモード創出
道路空間をフル活用した「自動物流道路」の検討が始まった。夏頃には想定ルートの選定も含め中間取りまとめを行う。10年で実現を目指すというまさに「物流革新」を象徴する壮大なプロジェクトだ。
政府が昨年6月に策定した物流革新に向けた政策パッケージに、「自動運転やドローン物流等高速道路上の車道以外の用地や地下を活用した物流専用の自動輸送を調査する」ことが明記された。これを受け、10月の社整審国土幹線道路部会による高規格道路ネットワークのあり方に関する中間とりまとめに「構造的な物流危機への対応、温室効果ガス排出削減の切り札」として自動物流道路の検討が盛り込まれた。
先の岸田文雄総理の施政方針演説では「自動物流システム構想を早期に実現していくなど、物流革新を進める」との発言があり、16日に政府が公表した中長期計画では「自動物流道路の構築を10年で実現を目指す」とし、一気に具体化に向けた検討に着手することとなった。
自動物流道路は政府の中長期計画における施策の1つ「多様な輸送モードの活用推進」に入る。鉄道(コンテナ貨物)や内航海運(フェリー・RORO船等)の輸送量を10年程度で倍増するモーダルシフトや、2030年頃までの本格的な商用運航を目指す自動運航船とともに30年までのロードマップが示されており、将来的には新たなモードの1つに位置付けようとしている。
国土交通省道路局によると、高速道路の中央分離帯や路肩、あるいは地下に専用空間を作り、自動運転カートなどを走行させることを想定するが、幹線輸送のほか、都市間輸送など需要・ニーズを分析しながら様ざまな可能性について検討していくという。
計画段階だが、既に海外では自動物流道路のプロジェクトが始動している。検討会でいくつかの事例が紹介された。地下トンネルに自動運転カートを通すスイスの計画は総計500㌔㍍。24時間365日の継続的な貨物の流れが実現すれば、これまでの物流のあり方も大きく変わってくる。
検討会では議論項目の1つに「急速に変化する社会・経済情勢の中、30年後・50年後の物流はどのような姿を目指すべきか」をあげる。実現に向けてはハード、ソフト両面で様ざまな課題があるが、広範な関係者の意見も反映させながらしっかりと将来像を示し、物流の持続的成長を促すプロジェクトとしたい。