状況見据え継続的な対策を
政府は来月上旬にも物流の緊急対策を打ち出すが、これに向け自民党の物流調査会が提言を取りまとめた。2024年問題に直面し、荷主と物流事業者間の取引実態の是正については前倒しに施策を講じるべきとし、来年3月末の時限措置であるトラックの「標準的な運賃」、「荷主対策の深度化」は〝当分の間〟の措置とする改正案を提示している。
標準的な運賃、荷主対策の深度化は18年に議員立法で可決・成立した改正貨物事業法に盛り込まれ、時間外労働規制の適用(24年4月)を見据え、緊急に運転者の労働条件を改善するための時限措置である。
しかし、この間のコロナ感染症や原油価格高騰などの影響からトラック運送事業者の経営環境は厳しい状況が続き、業界からは措置の延長を求める動きが強まっていた。
標準的な運賃については、4月末でトラック運送事業者全体の55・8%が届出を行っている。国土交通省が先ごろ公表した、同制度の活用に関するアンケート調査では、運賃交渉を行った事業者は69%と前年度調査(52%)を上回り、うち荷主から一定の理解を得られた事業者は63%(前回33%)。回答した事業者の約76%が措置の延長を望んでいる。
国交省は同調査から荷主に対しても標準的な運賃の制度に一定の理解が得られているが、全体で荷主の理解を得られたのは半分以内(43%)にとどまり、現状では〝道半ば〟とみている。
一方、国交省HPの意見募集窓口などから、荷主に違反原因行為の疑いがある事案に対処する荷主対策では、4月末で「働きかけ」を80件、「要請」を3件行っている。これらに至らなくても荷主の物流改善に成果がみられた事例もあり制度の実効性は確認されている。さらにトラック業界からの情報提供が求められる。
こうしたことからこれら時限措置を〝当分の間〟に延長することは〝道半ば〟である取引適正化の動きを強く推し進めるものだ。
さらに自民党の提言には、荷待ち・荷役時間の削減など規制的措置の導入も視野に取引実態の是正に係わるガイドラインを策定する方針を示す。省庁連携による「持続可能な物流の実現に向けた検討会」でも荷待ち・荷役原則2時間以内ルールを喫緊に取り組むべき事項案として提示している。
24年問題が大きくクローズアップされるが、一時的でなく構造的な問題であり、状況を見据えながら継続的な対策が求められる。