現場のドライバーへ確実に周知
JR貨物の3車両所で、輪軸組立作業時の不正行為が明らかになった。11日には全列車運行を止めて検査し、順次再開したが、宅配便の遅延など物流に影響を及ぼした。
鉄道貨物の輸送力増強に向け、国の施策が進められる中、こうした不正事案はモーダルシフト活用への期待の高まりと逆行し信頼を損なうものである。
自動車メーカーの燃費データや検査で不正の発覚が相次いだばかり。今回のJR貨物も作業教育やチェック体制に不備があったとしコンプライアンスの徹底に努める考えだが、現場が不正行為に至った背景をしっかりとらえる必要がある。官民で「物流革新」を押し進める機運の中で早期の信頼回復が望まれる。
安全に関わる不正事案を受け、安全を第一とするトラック運送事業者も現場のチェック、安全体制を総点検したい。重大事故を引き起こし、失った信頼を回復するのは容易ではない。
事業用トラックの事故件数(人身事故)をみると、コロナ明けから輸送量が戻ったこともあり横ばい・微増傾向にある。昨年は微減だったが、死亡事故、死亡・重傷事故件数は増加している。
今年に入り、事業用トラックが第1当事者となった死亡事故件数は1-7月累計で106件と昨年を14件上回り、2020年以降では最も多い。
さらに「ゼロ」を国、業界とも目標とする飲酒運転事故も後を絶たず、むしろ増加傾向にある。
直近では5月に埼玉県戸田市、群馬県伊勢崎市で発生した重大事故が記憶に新しい。戸田の事故は多重衝突で乗用車の3人が死亡、伊勢崎は正面衝突した乗用車の3人が死亡し、こちらは飲酒運転が確認されている。
とりわけ飲酒事案は当事者、企業だけでなく、トラック運送業界全体の社会的信頼を失うものであり、業界としてもその周知が問われてくる。
全日本トラック協会ではこうした重大事故、飲酒事案の再発防止を周知徹底するため、飲酒事案では国からの情報提供など収集体制を強化するほか、重大事故発生時における情報発信の改善策を図る。地方トラック協会へのアンケート調査をもとに対策を取りまとめた。
重大事故情報や注意喚起など、現場のドライバーに確実に伝わる仕組みづくりが肝要だ。秋の全国交通安全運動(21-30日)を契機にそうした情報発信の在り方も考えたい。