現場の声をしっかり捉える
ポストコロナに、新しい生活様式への移行を見据え、物流現場も人との非接触を前提とした施策がより現実的な課題になってきた。省力化、自動化の促進で生産性向上が期待される一方で、現場の声をしっかり汲み取ったものでなくてはならない。
宅配ではヤマト運輸とナスタが金沢市のアマゾンのユーザーを対象に、宅配ボックス1万台をモニター提供する取り組みに着手した。ヤマト運輸は感染拡大に伴い、在宅時の非対面による指定場所配達を2月中旬から始め、利用者から寄せられた様々な課題に対策をとってきた。
大手各社が置き配に乗り出すことで、消費者へより効果的に認知浸透が進む。浮き彫りとなるであろう課題への対策を重ね、新たな生活様式にふさわしい手法を見出したいところだ。
また、何より社会的問題である宅配再配達が削減される。非接触対策を契機に、現場の創意工夫を凝らした前向きな提案も望まれる。
物流倉庫の現場においても、非接触の課題はさらなる省力化、自動化を促し生産性と付加価値向上に繋がる。
10日の自民党物流倉庫議連総会ではこうした関連予算の確保と税制の措置継続を国会、政府へ強力に要請する緊急決議が採択された。コロナ渦でも物流倉庫はサプライチェーンを支え、労働力不足の中でもEコマースの拡大や小口多頻度化の進展と社会的要請は強まるばかり。環境変化への対応支援は不可欠だ。
非接触が大きなキーワードとなり、あらゆる自動化が進むことで実際に働く現場がどう変化し、どのような問題が想定されるか、事業者の対策も問われる。
運輸労連の難波淳介中央執行委員長は9日の政策推進議員懇談会の勉強会で、「非接触となれば物流に携わる私たち働く仲間の数も少なくなり、働く環境も変わる。そこも含め議員懇と連携し対応したい」とし、現場の実態をさらに深掘りしていく考えを表明している。
経済同友会が10日に公表した提言「物流クライシスからの脱却~持続可能な物流の実現~」では、目先不足とされる28万人のトラックドライバーを補う各施策を盛り込んだ。技術革新によるところも大きいが「技術革新による省力化を過度に期待するがあまり、足元の課題に対する取り組みに遅れを取ることがあってはならない」とも記している。
今年度,国は総合物流施策大綱改訂へ検討に入るが、コロナによる環境変化も踏まえ明確な具体策を示してほしい。