現場の実態を絶えず発信
運輸労連の難波淳介委員長が5・6日に行われた第56回定期大会で勇退した。4期8年のうち印象深いこととして、トラックドライバーに時間外上限規制の一般則適用を求める決議を採択した、第50回大津大会をあげた。100万人署名の実施をはじめ、広く世論を喚起する運動を通じ「ようやくトラック運輸産業の声が各産別に届いた。潮目が変わった」と振り返る。
この活動では目標を大きく上回る185万筆の署名を集めた。その3分の2は荷主企業の関係であり、トラック運輸産業を取り巻く厳しい現実が広く伝わった。トラックドライバーが「絶滅危惧職種」となりかねない状況もあらゆる機会で強く訴えてきた。こうした取り組みが18年末の改正貨物事業法成立にもつながった。
物流の2024年問題に直面する中で、抜本的な商慣行の見直しなどを盛り込んだ、「物流革新に向けた政策パッケージ」や、改正貨物事業法の時限措置の延長など、ここにきて国、政府による物流改善への動きが活発化しているが、現場の実態を訴えてきたこうした活動の積み重ねが大きい。難波委員長は退任にあたって「しっかり発信、発言し、魅力あるトラック運輸産業に変えていくよう団結して頑張ってほしい」と激励した。
トラックの23春闘は賃金改善で大きな前進が見られたが、荷主業界はこれを上回る。絶えず発信していかなければ産業間の格差拡大はさらに広がってしまう。
国、政府の積極的な施策はその後ろ盾であり、「トラック人財確保に向けた魅力ある職場・産業を作り出す好機」でもある。ものが運べない危機感を荷主は勿論、広く世間にも共有されつつある。時限措置が延長された「標準的な運賃」や「荷主対策の深度化」などを十分に活用し、労働環境改善の原資となる、適正運賃・料金収受への交渉を粘り強く進めていくことが肝要だ。
難波委員長からバトンを受けた成田幸隆委員長は就任にあたり、「伝えることと伝わることは違う。伝わる運動をしっかり行う」、「変化の時代、立ち止まることは最大のリスク」と果敢に臨む姿勢を示す。発信力も一方通行ではなく、正しい理解を得られるよう知恵を出していく必要がある。
政府、国の施策からは物流には強い追い風である今こそ、立ち止まらず的確に発信、交渉に動き、トラック運輸産業の魅力度を高めていきたい。