環境整備につながる施策を
改善基準告示の見直しに向け、国は昨秋の実態調査結果を踏まえ、業態別の作業部会で具体的な検討に入った。トラックは並行して今年度も2度目の調査を行う。実態を的確にとらえ、働く場としての魅力度向上につながる施策が望まれる。
2024年4月に時間外労働の上限規制960時間が適用され、これに合わせて改善基準告示が見直される。4月23日の会合で馬渡雅敏全ト協副会長が「運転者の責任にない、事業者が予見できない不可抗力の部分をどうとらえるか」が960時間の厳守に大きく関わると意見した。特例措置も含め外的要因分析をしっかり行う必要がある。
今般の実態調査からは改善基準告示にある拘束時間や休息期間、連続運転時間など事業者、運転者双方の回答が得られたが、このほか改善基準告示に係るいくつかの興味深い回答がみられた。
「改善基準告示を遵守することが難しい理由」について事業者の回答では荷待ち時間が最も多く、着荷主37・7%、発荷主35・8%だった。次いで「リードタイムや時間指定等の条件が厳しい」が22・6%など荷主との商慣習に係るところが多い。
これらがドライバーの時短を妨げている大きな要因でもある。これまでの会合でも荷主の実態を反映するよう意見があがったが、行政からは荷主対策は取引環境・労働時間改善中央協議会等で並行して進めるとしており、調査結果を踏まえしっかり連携してほしい。
一方、「運転業務の疲労度に影響があると思う事項」について運転者の回答では「道路渋滞」が56・3%と最大で、「待機時間」29・9%、「荷役作業」23・9%を上回る。自助努力だけでは解決できないこれら要素を十分にとらえる必要がある。
また、「需要があるにも関わらず拘束時間の規制で働けないという経験」の有無について運転者からは34・6%があると回答した。これはハイヤー・タクシー、バスの運転者も近い割合だった。
さらに「収入を増やすために改善基準告示等の基準を超えても長時間働きたいと考えるか」に対しては42・5%が働きたいと回答し、ハイタク(26・5%)、バス(29・9%)よりも高い。個別事情もあろうがトラック運転者の待遇改善が進まないことを印象づける。
労働時間の抑制により賃金が減少しては労働力の確保は進まず、担い手不足の悪循環が続く。賃金を上げ、拘束時間、休息期間や休日を法令に従って与えるバランスをとる。物流を止めないためにもこれらが可能となる環境整備が求められる。