着実に効果上げる車籍別データ
全日本トラック協会が、都道府県ナンバー別(車籍別)の車両1万台当たり死亡事故件数を公表した。
通常用いられるのは、発生地別の事故発生件数だが、トラック運送業界では、都道府県別に事故防止対策に取り組むことが多く、他県ナンバーが起こした事故のデータで対策強化を訴えても、説得力は今ひとつだ。同じ事故防止を訴えるなら、自県の車両のデータに基づき、対策強化に取り組んだ方が説得力が増す。
そこでナンバー別(車籍別)の事故データ公表に踏み切ったものだが、これが顕著な効果をあげている。
全ト協と各都道府県トラック協会の目標は、ナンバー別の1万台当たり死亡事故件数を「2・0」件以下とすることだが、2016年は、25都県でこの数値を達成した。15年度の17都県から8県増えている。14年度は11都県だったので、倍以上に増えたことになる。
なかでも、東京と島根は統計を取り始めた13年から4年連続で目標値をクリアした。島根は登録車両数が少ない(5886台)ということもあるが、16年は「0・0」件だった。ほかにも「0・0」件は岩手(1万4272台)など4県ある。
車両数が少ない県は、数値が上下にぶれやすい。山梨(7445台)は14年に「5・5」件、15年は全国ワースト1の「6・8」件だったが、16年はいきなり「0・0」件となった。組織率が7割と高い山梨県トラック協会では、安全とは無関係の支部講習会でも安全確保を訴えるなど啓発活動を強化し、独自事業である救命講習を通じて現場の安全意識高揚に取り組んだという。その結果、16年に山梨県ナンバーの事業用トラックは死亡事故を1件も起こさなかった。
東京は、車両数が多い(9万5012台)ため数値が安定しているように見えるが、4年連続目標クリアは特筆すべきだろう。
14年から公表を開始した、都道府県ナンバー別の1万台当たり死亡事故件数だが、全国平均は13年の「2・9」、14年の「2・7」、15年の「2・5」、16年には「2・1」と着実に減少を果たしてきている。
事故の絶対数で見ても、16年の死亡事故件数は、前年比50件減の258件へと減少しており、今年に入っても減少傾向は続いている。
国交省でも「データに基づく啓発により、事故防止の気運が高まっているのではないか」(安全政策課)と見ており、全ト協の取り組みに注目している。