経済再生の新局面追い風に
19都道府県の緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置が9月30日の期限で全面解除された。足踏み状態の景気を底上げし荷動きが上向くものと期待したい。
直近の景況指標やデータからは材料や燃料高騰の影響が顕著だ。
全国中央会による8月の中小企業月次調査では、運輸業の売上DIが前月より20ポイントと落ち込みマイナスに転じた。改善基調だった半導体・電子部品、自動車関連等の製造業が部品不足や原材料の高騰で悪化、これら荷動きの影響を受けた。
日通総研の7-9月荷動きDIは、4-6月より10ポイント下げ見通しに対しても下振れ。半導体供給不足による自動車生産が低調で「輸送用機械」の荷動きが大幅に低下した。一方で10~12月の見通しは、「一般機械」、「精密機械」など10業種で上昇の動きとみる。
不透明なのが非製造業、小売りだ。8月は緊急事態宣言等措置に大雨の影響もあり店頭販売は軒並みダウン。8月は前月比で百貨店が2ケタ減、スーパー、コンビニも半年ぶりのマイナスとなった。天候要因に百貨店は入場制限の措置もあり客数が大きく落ち込んだ。
自粛緩和でサービス業など1部業種の回復は想定されるが、EC市場の拡大をはじめコロナを契機とした新たな流通、サプライチェーンの変化を見据える必要がある。
トラック運送事業は足元の燃料高騰が懸念だ。軽油店頭価格は9月27日時点で138・7円と6年10カ月ぶりの高水準にある。材料・燃料高騰の動きが収益を圧迫する状況が避けられない中で、景気、荷動きの回復、そして何より適正運賃の収受が肝心である。
全国中央会調査による運輸業の販売価格DIは昨年3月以降マイナスが続いたが、8月はゼロベースに回復。帝国データバンク調査の運輸・倉庫業の販売単価DIも昨年3月以降平均目安「50」を割り、47-49台で推移するが、8月は49・8まで改善している。
トラック運賃は「WebKIT」成約運賃指数が6月に「108」まで下げたが、7月「116」、8月「122」に上昇しており回復基調といえる。
「標準的な運賃」が全事業者の届出割合でようやく3割を超えた。コロナ禍で荷主交渉の難しさもあるが、経済再生への新局面を追い風に粘り強く交渉に臨みたい。
年末までに数十兆円規模の経済対策を掲げる岸田新内閣には、とりわけコロナ禍で打撃を受けたトラック運送業など中小零細企業への追加施策が急務だ。