経済好循環へ早期対策を
物価高、エネルギー価格の上昇が消費マインド、企業の経営マインドに及ぼす影響は大きい。コロナ禍から景気回復の足踏み状態が続く。物価の落ち着きと価格転嫁が進まなければ、一段の回復は難しい状況にある。
帝国データバンク(TDB)が発表した8月の景気DIは、全体、運輸・倉庫業とも2カ月ぶりに悪化した。生活必需品の価格上昇やガソリン・軽油を含むエネルギー価格高騰のマイナス要因が続き、台風による人流・物流の停滞もあり下降した。
物流に関しては荷動きのプラス材料も聞かれるが、貨物関係の事業者からは、燃料や人件費の増加に対する価格転嫁が進まない厳しい声が引き続き聞かれる。
価格転嫁の状況はコスト上昇分に対する企業の価格転嫁率が全体で43・6%、運輸・倉庫業は26・2%(TDB7月調査)と開きがある。運輸・倉庫業は100円のコスト増に対し売価反映が26・2円。中小零細が多くを占めておりこうした状況が長期化するほど経営を大きく圧迫する。
運輸・倉庫業のTDB調査による仕入単価、販売単価各DIの動きをみると、5月までは仕入が下がり、販売単価は上げてきたが、以降販売が微増に対し仕入れは急伸。8月のDIは仕入が今年に入り最高の71・7、販売57・7でその差14と再び開いた。仕入が過去最高の75を記録した2022年3月は販売が51・8と大きく開いていたが、エネルギー価格高止まりの中で今後の転嫁状況が注視される。
さらに消費者の物価高とエネルギー価格上昇による節約志向の高まりが、物量にどう影響するかも懸念されるところだ。
資源エネルギー庁が発表した4日時点の軽油店頭価格は1㍑あたり前週より0・7円上昇の165・8円と9月では過去最高を15年ぶりに更新した。値上がり16週連続のうち、4週連続161円超の高値水準である。
岸田文雄総理は8月30日に与党の提言を受けて、9月末に期限を迎える激変緩和事業の延長・拡充を7日から発動することを表明した。
同日の会見で措置の対象として「地方の足である自動車、日本の物流を支える運送業、運輸業が使用するガソリンや軽油のほか、トリガー税制では適用対象にならない灯油、重油も含め年末まで講ずる」と述べている。重要インフラがしっかり機能し、経済の好循環を実現する上でも必要な対策を早期に打ち出してほしい。