荷主の理解、協力が不可欠
全国中小企業団体中央会(全国中央会)がまとめた5月の月次景況調査によると、運輸業の景況や売上高は、各指標が好転しているのに、収益率の上昇にはつながっていない結果となった。
運輸業の景況DIは前期比3・5ポイント上昇のマイナス18・2、売上高DIも2・2ポイント上昇の同7・6と改善している。一方、収益状況DIは2・6ポイント低下の同22・0と悪化した。
全国中央会では「大手・ヤマト運輸の運賃引き上げ決定を受けて、中小運送会社にも運賃・料金の値上げ機運が起こっているが、昨今の人件費上昇分を転嫁できるまでには至っていない」と分析する。
実際に「運賃は人手不足が認識されて上昇しているが、人件費がそれ以上に増加して、利益は悪化している」という中小トラック運送事業者の声は少なくない。また、業界の繁・閑期の落差も大きいことから、投資効率の低さが依然として改善されていないことも収益率の悪化要因となっている。
ある中小トラック運送事業者は「暇な時期でも月末の2~3日だけ貨物が集中すれば、途端に車両とドライバーが不足する。これが業界の実態だ」と指摘する。
トラック運送業界は、慢性化する労働力不足が一層拡大している。人手不足と高齢化の進展により需要があっても受注できず、大きな機会損失を招いている。
このまま深刻な労働力不足が進めば、短期には受注難や稼働率の低下=供給力の低下、長期には新規事業/開発の困難=組織力の衰退という事態を生じさせる。
中小企業の多くは、期待利益を十分に上げられない経営環境から「人的投資・賃金上昇の抑制化」→「人材難の悪化(生産性の低下)」→「さらなる利益の縮小化」という悪循環を招くことになる。
労働力不足に対しては、生産性向上の実現で改善を図る取り組みが進められている。
21日、首相官邸で第2回生産性向上国民運動推進協議会が開かれ、トラック運送業の2社がドライバーの拘束時間短縮に成功した事例を発表した。発荷主と着荷主のいずれもが運送事業者の窮状を理解し、物流の条件やコスト負担について、一定の歩み寄りを見せたことが「成果」につながった。
安倍首相は会議でのあいさつで「成果を上げるには荷主の協力が必要不可欠」と改めて協力を求めた。足下の「物流危機」を乗り越えるために、事業者と荷主の連携による具体的な取り組みが求められている。