荷主への継続的働きかけを
今冬の大雪による大規模な車両滞留を受け、国は3年前に公表した「大雪時の道路交通確保対策中間とりまとめ」に新たな対策を追記する。3日の有識者検討会で追記事項の素案が示された。滞留回避、通行規制や滞留発生時の対応など議論されるが、自粛、迂回など事前に行動変容を促す周知策の拡充が望まれる。
トラック運送事業者に対しては冬用タイヤ装着を促す異常気象時の安全確保を徹底する通達や、冬用タイヤの安全性確認をルール化するなど施策が講じられた。
今般の大規模滞留の契機になったのは大型車のスタックとされている。しかし発生時の現場は情報も錯綜しており、予め緊急時には関係者間が緊密に連携する体制が構築されていないと、救助や応援物資の要請をはじめ必要な情報伝達が円滑に進まない。
検討会で示された追記事項案では「人命を最優先に幹線道路上の大規模な車両滞留を徹底的に回避する」を基本的考え方に置いた。車両滞留を回避する対策では、移動の自粛や広域迂回の呼びかけを荷主にも対象を広げるなど行動変容を促す必要性を示す。ドライバーの安全確保を最優先に実効性ある施策が求められる。
荷主への協力では赤羽一嘉国交相が1月12日の会見で「トラック事業者への指導にとどまらず荷主も巻き込んで大雪の時の物流の在り方を関係省庁連携して協議する」との見解を示した。1月28日付で関係省庁が荷主団体へ輸送の安全確保を要請する文書を発出している。
大雪など異常気象時にやむを得ない場合には経路の変更を認めることや配送拠点の在庫の積み増し、予定配送時間の前倒し、物資の融通などトラック事業者への不要不急の運送依頼を控えるよう求めたものだ。省庁連携による継続的な働き掛けをお願いしたい。
異常気象時の運送には安全確保の措置を講じる目安が昨年2月28日付で通達されている。気象庁が作成する風速や雨量で車両に与える影響度合いを示す資料をベースに、輸送可否の判断目安を示したものだが、降雪時は「大雪注意報が発表されている時は必要な措置を講じるべき」との記載にとどまり現場の迅速な可否判断は難しいのではないか。
帝国データーバンクの1月景気動向調査では、国内の荷動き停滞の要因の1つに大雪の影響をあげている。荷主側も滞留の発生による事業への影響を考えると、異常気象時の物流維持へさらに踏み込んだ対策が必要だ。