行動変容へ大きな役割

ヤマト運輸は「高津千年営業所」(川崎市高津区)で、屋根に設置する太陽光発電からの電力に加え、家庭から排出されるごみの焼却で生み出される電力の供給を受け、地産地消による再エネ100%の稼働を実現した。物流事業者が介した官民連携による新たな地産地消のモデルケースといえる。
川崎市と市が出資する再エネ電力小売りの川崎未来エナジーと連携する。川崎市は2022年に環境省が定める「脱炭素先行地域」に選定され、高津区で集中的に取り組むため、ヤマト運輸をはじめ民間企業とともに 「脱炭素アクションみぞのくち」を推進している。
ヤマト運輸は現在、全国にEV約2300台、太陽光発電設備105基を導入する。2030年までにEV2万3500台、太陽光発電810基を導入、再エネ使用率を全体の70%まで向上する計画を立てている。
今回のような地産地消による再エネ100%電力で建屋、EV稼働の電力を賄うのは初めてのケースで、今後も川崎市内30の営業所のうち複数拠点で同様な取り組みを検討する。独自開発のエネルギーマネジメントシステム(EMS)で電力コストも大幅に削減できるという。
ヤマト運輸は川崎市内で43台、高津千年営業所で25台のEVを保有する。市の「脱炭素アクションみぞのくち」には22年4月から参画。連携して〝みんなで脱炭素アクションみぞのくち〟のシールを貼ったEVが稼働する。また、市民の荷物の受け取り利便性や脱炭素への貢献実感を目的に、6~8月に「PUDOステーション」で同社の荷物を受け取った顧客に抽選で景品をプレゼントするキャンペーンを展開。市民に対する脱炭素への意識変容、行動変容を、物流事業者ならでは手法で取り組んできた。
こうした官民連携の先進事例からさらに踏み込んだのが今回の取り組みだ。
川崎未来エナジーは主に公共施設に再エネ電力を供給してきたが、民間企業への供給は今回が初めて。川崎市の福田紀彦市長は「具体的に市民への見える化が重要。市民が理解しそのサービスを利用する好循環にしたい」と意義の大きさを主張する。
地産地消100%再エネ活用の与えるインパクトは大きい。消費者への行動変容は政府の物流政策パッケージにも示されている。取り組みの広がりとともに、日常の集配業務だけでなく、あらゆる接点機会において消費者に発信したい。