貨客混載で新たな価値創出も

貨客混載の取り組みが全国で広がってきた。愛媛県の伊予鉄バスが高速バスの空きスペースを利用、国土交通省の総合効率化計画に認定された。流通効率化へこうした事例を広く浸透させたい。
旅客鉄道やバス、タクシーの空きスペースを活用した取り組みが見られる中で、高速バスによる貨客混載の物効法認定は今回が初のケースとなる。
貨物、旅客とも人口減少、労働力不足と大きな社会の変化に直面している。とくに過疎地域での輸送確保はその対応が迫られる。AIやIоTなど情報化が進み、こうした先端技術も活用しながら共通の課題に対応する方策が望まれる。
貨客混載はその課題解決の1つとして普及促進へ期待が高まっている。
ヤマト運輸は全国各地で路線バス、コミュニティバス、電車などで貨客混載を実施しているが、新たに西東京バスと、東京都あきる野市・檜原村間の路線バスで宅急便を輸送する実証運行を始めた。
この地域は人口減で乗車人数が減り、路線維持の課題がある。ヤマト運輸も同区間の1日3回往復はドライバーの大きな負担。貨客混載によるドライバーの運転時間削減で、消費者との接点を増やし、要望に柔軟に応えすることでサービスの向上にもつなげる。
貨客混載はインフラ維持とともに、地域における生活サービス向上という視点でも新たな価値創出の可能性がある。
伊予鉄バスの取り組みも、地元八幡浜市で生産される果物や水産加工品を都心に運ぶもので地域活性化に寄与するものだ。連携したアップクオリティは、高速バスの空きトランクを使用して、従来の物流では県外へ出荷できなかった希少な農産物や伝統野菜などを都市部に運ぶ物流を企画している。こうした取り組みも物効法認定でさらに周知が期待される。
物効法は2016年10月の法改正から9月末現在で172件が認定され、この1年では62件と増えている。輸送網集約、モーダルシフト、輸配送共同化のほか幅広い取り組みに対象を広げて横展開を図る方向にある。7月には大臣官房に公共交通・物流政策審議官部門が新たに置かれ、双方シナジー含め支援体制を強めている。
過疎地域だけでなく、EC市場の拡大と再配達問題も含め、旅客、貨物を総合的にとらえた効率化・生産性向上が求められる。MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の展開も含めさまざまな視点から貨客混載の可能性を追求したい。