転嫁機運醸成も格差懸念
中小企業庁は3月、9月を価格交渉促進月間とし、事後的にフォローアップ調査を行っている。先ごろ公表された3月の調査結果からは、トラック運送業の価格転嫁率は依然として他業界と開きがあるものの転嫁率は改善傾向を示している。
多くの中小企業が価格交渉・転嫁できる環境整備のため、中企庁が価格交渉促進月間をスタートしたのが2021年9月。その後も原材料費やエネルギー費、労務費が上昇する厳しい環境が続くが、行政も取引適正化へ踏み込んだ施策を講じ、全体では価格交渉の機運醸成が進んでいるようだ。
中企庁のフォローアップ調査でコスト上昇に対する価格転嫁率を示した22年9月以降をみると、全体では22年9月46・9%、23年3月47・6%、23年9月45・7%、今回の24年3月46・1%。トラックは同20・6%、21・1%、24・2%、28・1%となる。調査対象企業・数は同一ではないが、トラックは前回、今回で数ポイント上昇、それでも27業種中最下位は変わらず、全体とは18ポイント、トップの化学(61・0%)とは31・9ポイントもの開きがある。
トラックは62・9%が価格転嫁できたが、多くが1~3割にとどまる。全体では67・2%が価格転嫁できたとし、全額転嫁も2割あり、このあたりで格差が生じている。
前回の調査より価格転嫁率が上昇したのは27業種中13業種。転嫁率が低い業種ほど上昇傾向にあり、業種間の格差は多少なりとも是正されているようだ。
この数値は中小の受注側企業からの調査をもとに取引先である発注側企業を業種毎にまとめたもの。多重下請け構造のトラックは物流法改正で様ざまな施策が打ち出されるが、一気に転嫁率を向上させるのは容易ではない。受注側としては粘り強く交渉を積み重ねていくことが肝要だ。
齋藤健経産大臣は調査結果を受け「発注企業からの交渉の申し入れが増え、交渉しやすい雰囲気が醸成されつつある。全額転嫁の割合も増加し、価格転嫁の裾野が広がる一方、転嫁できた企業とできない企業で二極化する兆しもあり、引き続き対策を徹底していく」とコメントしている。
労務費の転嫁対策をはじめ行政による各業種・業界への適切な転嫁へ向けた周知が進んでいる。業界特性を踏まえながら、個別企業の格差においても「転嫁できない企業」を取り巻く状況、課題など掘り下げて対策を講じる必要がある。