輸送の安全が最優先
警察庁が公表する交通事故統計によると、今年の交通事故死者数は増加傾向にある。営業用トラック(軽貨物を除く)が第1当事者となる交通死亡事故は1-8月累計で122件と前年の103件を上回るペースで推移している。
秋の全国交通安全運動(21-30日)における取り組みが各地で行われておりコロナ禍で自粛していた街頭活動なども再開した。30日は〝交通死亡事故ゼロを目指す日〟である。運動を契機に交通事故防止へ積極的な取り組みが求められる。
トラックの第1当死亡事故は2019年の239件が、20年207件、21年200件と減少し、昨年は169件と大きく削減した。一方で今年8月までの累計122件は21年の124件、20年の128件に近くこのままの推移では再び200件超となる懸念がある。
昨年度の軽貨物も含めた営業用トラック全体の事故件数(人身事故)は1万4383件。20年度の1万3500件で下げ止まり、21年度は1万4031件で再び増加に転じた。軽貨物の事故増加が大きく影響する。軽貨物を除くと21、22年度は僅かながらだが減少している。
軽貨物事故は22年度の営業用トラック全体のうち5012件と3分の1を超える。5年前の18年度で全体1万7396件に対し軽貨物3968件と23%だったが35%まで高まっている。
事業用軽貨物の4割が追突事故だが、顕著なのは死亡・重傷事故が増えていること。16年度の199件に対し22年度は403件と倍増しており早急な対策が必要だ。このことは政府の物流政策パッケージにも記され、国交省では必要な措置を講じる考えだ。
貨物軽自動車運送事業者の届出件数をみると5年前の18年3月末16万2788件に対し22年3月末で20万9250件。コロナ禍によるEC需要の増加で軽貨物の輸送量の拡大傾向が事故件数にも影響していることが伺える。
コロナ禍からの経済活動の再開で輸送需要増加による事故件数の拡大が懸念される。
しかし物量が増えたから事故も起きるとの想定はできない。多くの事業者が日々運行管理を徹底し、確実な点呼を実施しているが、過労に過信、状況変化への対応など業界全体に影響を及ぼす重大事故につながりかねないリスクは常に存在する。
24年問題でトラックに関心の目が向けられる中で逆風とならないよう再発防止に留意したい。