輸送手段多様化に期待

SGホールディングスグループが4月から中国での鉄道輸送を本格稼働する。中国政府の「一帯一路」に対応した輸送手段の多様化が進み、鉄道貨物輸送の重要性が高まる中で新たな輸送サービスに乗り出す。

昨年10月から半年間、華南・華北間を網羅した鉄道輸送サービスのトライアルを行ってきた。定時運行でトラック輸送よりもリードタイムの確実性と運行の安全性向上が見込めること、一度に大量の荷物を運べ、輸送価格もトラック輸送と同等かルートによっては廉価で提供できることなどを確認した。

一方で中国では環境問題が大きな課題であり、鉄道がトラックに比べCО2排出を88%削減できることもメリットである。

SGHグループでは中国での鉄道輸送サービスを、周辺諸国とのクロスボーダー物流機能の礎とし、ネットワークを拡充していく考えだ。

先日、経済産業省などが都内で行ったシンポジウムでは、中国と欧州間鉄道輸送の車列本数が2013年の80列車から6年で約80倍の6300列車に拡大し、40フィートコンテナ換算で約27万FEUに輸送実績が伸びていることが紹介された。

これまで鉄道輸送の関心が高まらなかったのは航空と海運での輸送が定着し、荷主の認識が特殊な輸送商品との位置づけで、鉄道輸送は緊急時の非常手段的な考えがあったという。しかし近年注目度は増し、過去に発生していた盗難は大分減少、荷物事故のリスクも海上輸送と同等の水準だと安全性も報告されている。

一方、日本と欧州間輸送では、国土交通省がシベリア鉄道による貨物輸送パイロット事業の結果について、リードタイムは海上輸送の2分の1~3分の1、温湿度や振動など輸送品質の問題はないなど報告している。海上輸送は安定するが日数がかかり、航空輸送は日数の短縮もコスト高。シベリア鉄道はその中間の位置づけである。

このパイロット事業は、12日にロシア・ヴォロネジで開かれた日露運輸作業部会第6回次官級会合で結果を共有するとともに、シベリア鉄道のさらなる利用促進へ、引き続き両国で協力を進めることを確認した。

これら中国、ロシアの鉄道を活用した輸送手段について、荷主が懸念するリスクや商慣習など実証を重ねることで課題解決の筋道も明るくなってくる。さらに国・地域の物流インフラの特性も踏まえた事業展開など、輸送手段の多様化に期待が高まる。