運賃上昇も需要取り込めず

国内景気は、プラス材料とマイナス材料が混在し、足踏み状態が続いているようだ。帝国データバンクの景気動向調査によると、8月の景気DIは前月と同じ49・5で、横ばいとなった。

8月の国内景気は、自動車関連の生産持ち直しや旺盛なインバウンド需要が続くなか、猛暑や自然災害が様ざまな影響を及ぼした。

10業界のうち、「卸売」「サービス」「建設」「農・林・水産」「不動産」の5業界が改善し、「製造」「小売」「金融」など4業界が悪化、「運輸・倉庫」は横ばいだった。

「運輸・倉庫」業界の景気DIは、前月と同じ50・3と足踏み状態だ。自動車や建設関連、飲料などの荷動き好調がプラス材料となった。

なかでもトラック運送は、通販需要の拡大が寄与したほか、猛暑の追い風に加え、豪雨災害による鉄道網寸断でトラック輸送需要が膨らみ運賃が急上昇した。その結果、運輸・倉庫の販売(運賃・料金)単価DIを55・9と押し上げ、過去最高(18年7月55・4)を更新した。

その一方で、人手不足から需要を十分に取り込むことができなかったほか、軽油価格の高止まりがマイナス材料となり、トラック運送はわずかな改善にとどまった。

運賃はドライバー不足などを背景に適正水準へ向け改善していたが、7月から急上昇し、8月は7月を上回る勢いになっている。

全日本トラック協会と日本貨物運送協同組合連合会が公表しているWebKIT成約運賃指数は、帰り荷などのスポット運賃の指標として注目されている。これまで年末、年度末などの繁忙期に指数は上昇し、7、8月は一服状況となる傾向を示してきた。

この常識が今年7、8月に崩れた。ドライバー不足や労働時間短縮などにより供給力が不足している中で、7月豪雨によってJR貨物が運休となり、トラックを中心に代替輸送の需要が一気に高まった。運賃指数は7月が123(前年同月比10ポイント増)、8月130(同12ポイント増)で、指数は年末や年度末など、繁忙期水準まで上昇した。

にもかかわらず、トラック運送事業の景況感は、足踏みを続けている。人件費・燃料費など経営コスト上昇圧力や人手不足に対する改善が進まないことなどから、先行きに不安を感じる事業者の声が多くみられる。

不足するドライバーを確保するためには、給与や労働時間などの労働条件見直しが不可避だ。

その原資を確保するためにも、引き続き採算に見合う、適正運賃収受に取り組みたい。