運転者の行動変容を促す
国土交通省は2021年3月に策定した「事業用自動車総合安全プラン2025」に基づき、交通事故死者数225人以下、飲酒運転事故ゼロなどの目標を掲げ、対策に取り組んでいる。しかし最近の事故状況からは目標達成は難しく、軽貨物の事故が増加するトラックは目標値と予測値に大きな乖離がある。
11日の自動車運送事業安全対策検討会で「プラン2025」の最終年となる25年の予測値を示した。トラックは目標値を設定した事故件数、死者数、重傷者数、個別目標として定めた追突事故件数のいずれも予測値では達成しない。ゼロ目標の飲酒事故に至っては23年で全体の48件のうちトラックが45件を占める。
予測値は19年と23年の事故件数を直線的に結んで算出した。コロナ禍では事故件数は減少傾向で、この影響を差し引いた。
「プラン2025」には軽貨物と軽貨物以外のトラックの目標値は定めていないが、23年の事故件数は軽貨物以外が9181件(同21・1%減)に対し、軽貨物は4992件(19年比25・5%増)と、トラック全体では軽貨物の事故増加が大きく影響している。
4月1日施行の改正法では、軽貨物の安全対策についても、法令等知識を担保するべく管理者選任と講習受講、国交大臣への事故報告を義務付けることとなっている。一般貨物に課す安全対策を軽貨物にも同様に規制強化するもの。各地で説明会など周知を図っているが、改正法による法令遵守はもとより、一般貨物と同様に安全意識を広く浸透させる必要がある。
軽貨物以外のトラックの事故件数も微減にとどまる。前年比で20年の18・7%減から、21年0・4%減、22年0・5%減、23年2・0%減である。
全日本トラック協会は、新たに4月10日、9月30日をトラック運送業界として全国統一した事故ゼロを目指す日に制定、リーフレットを作成するなど、事故防止意識の醸成へ業界一丸で取り組む構えだ。
国は26年度以降の新たな総合安全プランの策定に入る。安全対策検討会が示した今後の対策の1つに、運転者の行動変容につながる方策を示している。
健康起因事故や飲酒運転対策の各種マニュアルなどを容易に閲覧できるショート動画を作成し、広く活用を促す。軽貨物の安全対策も同様な手法が考えられる。日々の業務において安全意識を徹底していく施策が求められる。