適切な価格転嫁の定着を

中小企業庁が行った、9月の価格交渉促進月間フォローアップ調査によると、トラック運送業の価格転嫁率、価格交渉の実施状況は依然として全業種の中で最も低い状況にある。
コスト上昇に対する価格転嫁率は前回3月調査より改善したが、発注側としてのトラックは29・5%で全30業種中29位、受注側は34・4%で30位。また、価格交渉の実施状況に係る回答を点数化したところ、トラックは最も価格転嫁に応じられていない業種となる。
下請中小事業者がコスト上昇分を取引価格に適切に反映されるよう、中企庁は2021年9月から3・9月を価格交渉促進月間とし、事後的にフォローアップ調査を行っている。今回、受注側企業に送付したアンケート調査からの発注側企業数は延べ5万4430社。トラック運送業からの回答では発注側もトラックの回答が多い。
11月28日開催の「第2回トラック運送業におけり多重下請構造検討会」では、元請けの川上段階でのルールづくりなど議論の方向性が示されたが、実運送がしっかり適正運賃・料金を収受できる環境整備はまだまだ道半ばである。
今回の中企庁のフォローアップでは、新たにサプライチェーンの各段階における価格転嫁の状況を調べた。
それによると、全体では1次請け企業の転嫁率は約52%であるに対し、4次請け以上の企業は約35%。4次請け以上では、全額転嫁できた企業の割合は1割程度で、全く転嫁できないまたは減額された企業は4割近くに上る。受注側企業の取引段階が深くなるにつれて、価格転嫁割合が低くなり、トラック運送業のみならず、より深い段階への価格転嫁の浸透が課題であることが鮮明になった。
武藤容治経産大臣は調査結果を受け、全体では価格交渉しやすい雰囲気は醸成されつつある一方、全く転嫁できない企業も約2割と二極化にあることや、取引段階が深くなるほど転嫁割合が低くなる傾向を指摘。「中小企業の賃上げ原資の確保、サプライチェーン全体の強化へ引き続き価格転嫁を後押しする」考えを表明している。
今般の政府の総合経済対策では、価格転嫁について「一定の成果は上がっているが、物価高が継続する中、中小企業の賃上げを後押しするため、これらの取り組みを一層強化する」としている。下請法改正も含め新たな商慣習として、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁の定着が急がれる。