適切転嫁の新たな商慣習
経済好循環への大きな節目となる2024春闘。昨年を上回る賃上げ水準の意向を示す大手も相次ぐ。トラック運輸業界は運輸労連が6・0%、1万5000円、交通労連トラック部会は6・5%以上、1万5700円の統一要求を掲げる。24年問題に直面する中で、物価上昇への対応と他産業との格差是正へ強い意思で臨む。
運輸労連の成田幸隆委員長は24日の中央委員会のあいさつで「労働時間の長さに依存しない本格的な賃金制度へ移行する時代に変えていく時期」とし「私たち自身が大きな変化を起こすこと」と呼びかけた。
運輸労連の2024春闘要求方針の構想は昨年12月に一般紙にも大きく取り上げられ、社会全体で物流、トラックへの認知度が高まっていることが伺える。政策パッケージなど国の施策も講じられ「この機を逃してはならない」とベクトルを合わせる。
交通労連の織田正弘トラック部会長は23日の中央委員会で、厳しい事業環境下だが物価上昇を超える賃上げへ原資確保が必然とし、6・5%という「これまでにない要求額」を設定、「強い意思をもってインフレマインドに変革を」と主張する。
織田委員長は適正運賃収受への交渉とともに同業者間でも「重複事案は業務連携し、無駄なコストを省き、人、設備投資を実現すること」とし企業間の業務連携を労使で進める意向を示す。様ざまな観点から24春闘を通じ業界自体の変化、変革を促していく。
春闘に先立ち、22日に行われた政労使の意見交換で岸田文雄総理は「所得増と成長の好循環による新たな経済へ移行するチャンスを迎え、物価上昇を上回る構造的な賃上げを実現する」とし、昨年を上回る水準の賃上げを求めた。今夏には賃上げと所得減税の組み合わせで、可処分所得の伸びが物価上昇を上回る状態を官民で確実に作り上げたい考え。
課題は雇用の7割を占める中小企業・小規模企業だ。政府は中小の賃上げ原資確保へ鍵となるのは労務費の価格転嫁であるとし、労務費の転嫁対策に懸命だ。昨年末に決定した労務費転嫁への価格交渉に関する12の行動指針の徹底を産業界に強く要請している。
トラックは「標準的な運賃」を活用した交渉を促すが、労務費の転嫁はとくに難しい問題だ。
しかし、政策パッケージで商慣習是正への法制化が進捗する中で、適切な価格転嫁を新たな商習慣として定着させるよう変革が求められる。