適正運賃収受の流れに

帝国データバンク(TDB)が発表した1月の景気動向調査で、運輸・倉庫業界の景気DIは5カ月ぶりに悪化した。調査対象の約6割を占めるトラック運送業も小幅ながら改善してきたが7カ月ぶりの悪化。長期化するコスト圧力とともに、生活費の上昇、設備稼働率の低下で生産・出荷が振るわず物流にも影響を及ぼしている。
依然として原材料価格の高止まりや電気代などエネルギーコストの増加が企業活動の負担となっている。価格転嫁は緩やかながら進んではいるものの、とくに転嫁率が低い運輸・倉庫業はコスト負担が経営に重くのしかかる。ドライバー不足も深刻さを増し、2024年問題への対応とともに企業経営を大きく圧迫する。
1月の百貨店売り上げを見ると、行動制限がない中で客数が伸び高額品が売れるなど2ケタ増 と景気浮揚感も伺えるが、さらなる値上げラッシュで今後の消費動向が注視される。
物流大手の1月宅配個数実績では、ヤマト運輸が宅配便3商品で0・2%増とほぼ横ばい、SGホールディングスは4・8%減でともに今年度の対前年同月比で最も低い水準、10-12月は「保守的に見ていた需要の想定が下回った」(ヤマト運輸)としている。
企業の倒産件数は増加が続く。とくに「物価高倒産」(TDB発表)で1月は初の50件となり7カ月連続で最多を更新した。業種細分類別では運輸業が10 件と最も多い。コスト上昇分を転嫁できない中小事業者を中心に引き続き増加傾向で推移すると見られており、トラックは業界一丸で取り組んでいる「適正運賃収受」なしにこの難局は乗り越えられない状況だ。
こうした状況下、佐川急便、ヤマト運輸が4月からの宅配便など届出運賃の改定を相次ぎ発表した。2017年以来の改定でヤマトは約10%、佐川は約8%の値上げ。佐川は「従業員・パートナー企業の労働環境の改善やサービス品質の維持・向上を図る」とし、今後、届出運賃を年度ごとに更新するというヤマトは、「環境変化の影響を適時適切に反映させプライシングの適正化」とともに、「社員、物流パートナーの労働環境の改善に繋げる」とする。
物流の安定化には確実な雇用確保ととともに、下請けパートナー企業の適正な運賃収受への対応が不可欠だ。今回の大手の運賃改定を契機に、適正運賃収受の流れを一気に加速させたい。