適正運賃収受への理解が必要
トラック運送業界は、景況感が改善しているのもかかわらず、労働力不足感が強まり、運賃・料金水準が低迷している。
全日本トラック協会がまとめた景況感調査によると、2016年10―12月期の景気感は、水面下ながらも前期比17・3ポイント上昇し、マイナス12・8へと改善した。2期連続の改善で、14年4―6月期以降では最も水面近くまで浮上した。
一方、運賃・料金水準は、一般貨物が前期比1・4ポイント上昇のマイナス2・7と小幅ながら改善したが、宅配貨物はプラス6・7から14・8ポイント低下のマイナス8・1と水面下に落ちた。特積み貨物はプラス7・5だが、前期比0・5ポイント低下となった。
ここまでは、燃料価格の下落により景況感は好転してきたが、その一方で労働力不足感は一段と強まっている。10―12月期の労働力不足感は前期比5・5ポイント上昇し77・3と過去最高だ。ドライバー不足感は改善されず、むしろ悪化している。
ネット通販・eコマース関連の宅配貨物は輸送需要が活発だが、労働需給ひっ迫の影響で委託費や下払経費が増加し、コスト増に苦しんでいる。こうしたコスト上昇に対して大手宅配便企業の幹部は「自助努力だけで利益を確保するのは困難と認識している。サービス品質の維持に必要なコストと適正な利益の確保が必要」と、運賃・料金適正化の必要性を強調する。
全ト協調査によると、17年1―3月期は、運賃・料金水準が前期より悪化する見通しだ。一般貨物は前期のマイナス2・7からマイナス3・6へと低下し、宅配貨物はマイナス8・1からマイナス10・8へと悪化する。唯一プラスだった特積み貨物もプラス7・5から0・0と水面まで下落する。一方の労働力不足感は、年度末の繁忙期とあって、過去最高だった前期の77・3を12・8ポイントも上回る90・1に達する見込みだ。
1―3月期の景況感見通しについては、原油高の懸念や企業コスト増加、ドライバー不足などを反映して景況感を押し下げる要因となり、前期の改善から大幅に悪化すると予想している。
中小トラック事業者から「荷動きが芳しくない状況に加え、ドライバー不足で受注機会の喪失が発生した」などの声が聞かれる。民間情報機関によると、トラック倒産は低水準だが、ドライバー不足に起因する倒産があとを絶たないという。
国民生活に不可欠な物流サービスを維持するためには、適正運賃・料金収受への理解が必要だ。