適正運賃収受を持続的に
物流企業の4-6月期(第1四半期)業績は、適正運賃・料金収受の取り組みが進展し、単価は上昇傾向だが、荷動きは総じて低調だった。物量の低迷は想定範囲内でもあり、通期業績予想は据え置くところが多い。
宅配大手のヤマトホールディングス、SGホールディングスはともに通期の取扱個数について、期初予想に対しそれぞれ1・9%、1・4%引き下げている。
ヤマトHDは法人領域(大口)で新規獲得が進んだが、消費の回復を見込んでいたリテール領域(個人、小口法人)が伸び悩んだ。通期売上高も下方修正している。
SGHDは届出運賃改定と適正運賃収受の取り組みで平均単価は1・9%の増加も、個数は3・4%減少と消費低迷の影響を受けた。上期のデリバリー事業の売上高を下方修正したが、下期の変更はない。
直近7月の取り扱い個数をみると、ヤマトは前年同月比5・7%増と4-6月累計2・0%増を上回り、これは越境EC、大口法人の新規獲得の寄与が大きいとしている。SGも7月は1・0%増と3カ月振りのプラスに転じている。
物流各社の期初予想では、国内の物量動向は下期から回復傾向と見るところが多い。2024年問題や人手不足への対応で、傭車費・外注費の増加が収益を圧迫する状況も織り込み済みだろうが、第2四半期以降売上高の下振れ要素が気掛かりだ。とくに物価高騰で長引く個人消費の動向が注視される。
帝国データバンクの7月調査では、3月からほぼ横ばいで推移していた運輸・倉庫業界の景気DIが5カ月ぶりに悪化した。コスト上昇とともに低調な個人消費が引き続き荷動きに影響する。事業者からは運賃交渉で単価は上昇するも、全体的な荷動き減少への懸念や、「2024年問題の関係で残業対応を増やせず、荷主の依頼を対応しきれていない」という声も聞かれる。
一方で7月はインバウンド消費や猛暑による特需、自動車生産の復調や旺盛なDX需要など荷動きへのプラス材料もある。
輸送ニーズはより複雑化しており、効率化・最適化を図りながら、各社強み、特性を発揮した付加価値追求型で売上拡大を図りたい。
また、4-6月期業績からは適正運賃・料金収受の取り組みが前進していることも明らかだ。トラック運送業の価格転嫁率は依然として他産業と比較すると低い。今できることを着実に実行したい。